危険予知トレーニング(KYT)とは
危険予知トレーニングとは、作業前に潜在する危険を想定し、対策を話し合う活動です。
一般的にKYTと呼ばれることが多く、これは危険(Kiken)のK、予知(Yochi)のY、トレーニング(Training)のTの頭文字をとって名付けられています。
建設現場や発電所、工場などでは、作業開始前にイラストや実際の作業内容をもとに危険箇所を洗い出し、事故防止につなげる目的で実施されています。

KYTが必要なわけ
KYTを実施することで、職場全体の安全意識が高まり、事故やミスの発生を減少させる効果が期待できます。
現場に潜む危険の多くは作業者が知らない危険ではありません。高所作業では墜落、重量物取扱いでは挟まれ、電気作業では感電といった危険は誰もが理解しています。にもかかわらず事故は発生します。
事故の原因は「危険を知らなかった」ではなく、「危険を意識していなかった」場合が少なくありません。KYTの目的は新しい危険を発見することだけではなく、作業前に危険を再認識し、安全意識を高めることにもあります。
KYTは作業者の意識を危険へ向けることで、ヒューマンエラーや不安全行動の防止に役立つのです。

KYTの進め方
最もポピュラーなのが『基礎4ラウンド法』です。
4つのステップ(ラウンド)を通じて、職場の潜在的な危険を特定し、対策を立てる方法です。
STEP1 現状把握 『どんな危険がひそんでいるか』
まず、「この作業でどんな危険がひそんでいるか」
を考えます。
リーダーが作業概要を説明し、メンバーが気づいた『危険』を発言します。
できれば7項目ぐらいの『危険』を上げましょう。
<危険の例>
- 脚立の設置が不安定なので、脚立が倒れて、転落する。
- フォークリフトの死角があるので、作業者を見落として、接触する。
- 吊荷の下に入り、荷が落下して、死亡災害になる。
- 足場に資材が散乱しているので、つまずいて、転倒する。
- 配管が高温になっているので、誤って触れて、火傷する。
STEP2 本質追及 『これが危険のポイントだ!』
複数の危険の中から、事故の重大性や発生頻度を考慮して
「これが危険のポイントだ!」
となる危険を1つか2つ選定します。
リーダーは『危険のポイント! ○○なので○○して○○になる。ヨシ!』と危険のポイントを挙げたのちに、全員で『○○なので○○して○○になる。ヨシ!』と指差呼称します。
<危険のポイント例>
- 脚立の設置が不安定なので、脚立が倒れて、転落する。ヨシ!
- 配管が高温になっているので、誤って触れて、火傷する。ヨシ!
STEP3 対策樹立 『あなたならどうする?』
それぞれの『危険のポイント』に対して、具体的で実行可能な対策をチームで出し合います。
この対策は各『危険のポイント』について3項目程度上げるのがベターです。
<危険ポイント『脚立の設置が不安定なので、脚立が倒れて、転落する。』の対策例>
- 脚立を保持する補助者を配置して、高所作業や不安定な場所では一人で作業しない。
- 使用前に床面の凹凸や傾斜を確認して脚立を水平で安定した場所に設置する。
- 開き止め金具が完全にロックされていることを確認し、脚立の開き止めを確実にする。
STEP4 行動目標を決める 『私たちはこうする』
STEP3であげた対策例のうち、危険による被害を最小化できる対策を1つに絞り込みます。
絞り込んだ対策はチーム目標として、全員で指差し唱和します。
<指差し唱和の例>
リーダー 『チーム行動目標! 脚立を使用するときは、補助者を配置して、高所作業や不安定な場所では一人で作業しよう。ヨシ!』
全員 『脚立を使用するときは、補助者を配置して、高所作業や不安定な場所では一人で作業しよう。ヨシ!』 ※これを3回コール
全員 『本日もゼロ災で行こう。ヨシ!』 ※締めのコール

KYTにも限界がある
KYTは重要な活動ですが、万能ではありません。
危険を思いつかなければ対策できない
慣れによる形骸化が起きる
毎日同じ内容になりやすい
という課題があります。
そのため、
KYTだけに頼るのではなく、
リスクアセスメント
設備や作業方法の見直しにより危険源をなくす本質的安全対策
安全パトロール
などと組み合わせることが重要です。

リスクアセスメントの進め方
まとめ
KYTは特別な知識や設備を必要とせず、今日からでも実施できる安全活動である。一方で、KYTだけでは事故を防ぎ切れないことも忘れてはならない。本質的安全対策、リスクアセスメント、安全パトロールと組み合わせて、その効果を発揮できる。
<投稿者情報>
難波一夫
IHI/石川島播磨重工業 出身 の重工系技術士(金属部門)
中小企業診断士・労働安全コンサルタント・エネルギー管理士資格を保有
材料から設備を診る! 技術経営コンサルタント
