【テクノアーカイブ】USC(超々臨界圧)発電プラント Part 6 許容引張応力とは|下方修正による必要最小肉厚(tsr)割れの衝撃

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許容引張応力とは

火力発電プラントで使用される材料は、通常、使用する材料ごとの許容引張応力(許容応力)が設定されていています。この許容引張応力とは、材料が破壊や有害な変形を起こすことなく使用できる引張応力の限界値です。

発電用火力設備の技術基準の解釈

別表第1 鉄鋼材料の各温度における許容引張応力

許容引張応力が設定されていない材料は、以下の4つの値(クリープ温度領域未満での基準)を算出し、そのうちの最小の値で許容引張応力が設定されます。

(1) 室温における規定最小引張強さの 1/4

(2) 当該温度における引張強さの 1/4

(3) 室温における規定最小降伏点又は耐力の 2/3

(4) 当該温度における降伏点又は耐力の 2/3


図 許容引張応力の決定例
(例:STBA24;2.25Cr-1Mo鋼)

ボイラ鋼管の必要最小肉厚(tsr)

火力発電プラントで使用する鋼管の厚さ(肉厚)は、内部の圧力に耐え、構造上の強度を維持するために必要な計算上の最小肉厚をこの許容引張応力(σallow)をもとに決定します。その必要最小肉厚を『tsr:Thickness shell requirement』といいます。

tsr

許容引張応力は、材料固有の強度に所定の安全率を見込んで決定されていますので、鋼管の厚さが摩耗や腐食で減肉して、この必要最小肉厚(tsr)を下回っても、強度的にただちに鋼管が破壊されることはありません。

しかしながら、肉厚がTsrを下回るということは、設計上想定している応力(許容応力)を超える負荷が材料にかかる状態を意味します。そのため、電気事業法等の技術基準違反(不適合)となり、安全確保および法令遵守の観点から、肉厚がTsr未満になった状態で火力発電プラントは運転することができません。

鋼管を新品に取り替えたり、肉盛溶接で肉厚をビルドアップ(復元)するなどの対応により、技術基準に『適合』したと判断され、プラントの運転ができることになります。

点検 溶接
ボイラチューブの目視確認とtsr割れ管の肉盛補修

許容引張応力の下方修正

超々臨界圧(USC)ボイラの実用化に伴い、主蒸気温度・再熱蒸気温度が600℃超へと高まる中で、9%Crや12%Crなどの高クロム鋼が広く採用されてきました。

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高クロム鋼は比較的短時間の試験では優れた強度的特性を示すものの、実機での長期運用(数万〜十数万時間)を模した長時間クリープ試験や、実機USCボイラのトラブル事例から「従来の評価手法で予測されていたよりも、長時間域でのクリープ 破断強度が低い(低下する)」ことが判明しました。

特に、ある一定時間を超えると強度が急激に低下する現象(いわゆる『腰折れ現象』、Type IVクラックや組織変化に起因するものなど)に対する懸念が強まりました。

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こうした技術的知見のアップデートを受けて、経済産業省の「発電用火力設備の技術基準の解釈」が2014年(平成26年)の大規模な見直しされることになり、火技解釈別表に定められている許容引張応力の下方修正および、新たな寿命評価式の制定・改正を行いました。この改正では、対象となる多数の耐熱鋼(高クロム鋼含む)の許容応力が安全側に引き下げられました。

20140526 商局第1号 発電用火力設備の技術基準の解釈について

現場に突きつけられる許容引張応力 下方修正の影響

12Cr鋼(SUS410J3TP;HCM12A)でケーススタディしましょう。平成17年の改定を境に、許容引張応力が600℃を超えると、改定前と比較して約20MPaもの下方修正がなされています。

許容引張応力の下方修正
図 12Cr鋼の許容引張応力

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この修正後の許容引張応力で必要最小肉厚(tsr)を計算すると、既設配管の肉厚はtsrを下回る(tsr割れ)ことになりました。この下方修正後のtsrは遡及適用されないため、対象火力発電プラントの運転停止は免れましたが、余寿命による管理が求められることになりました。

『余寿命による管理』とは、経済産業省の定める高クロム鋼の寿命評価式やその他の方法で次回のプラント停止時(定期点検)までの寿命があることを判断することが前提ということです。

https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2014/06/2606303.pdf

現場での対応

当時、私の現場でも高クロム鋼製配管を全更新する計画されつつありました。しかし、その時期をいつに定めるか、全更新までプラントを安定運転できるか、判断(方針書の作成)が必要なところ、頻発する蒸気漏洩トラブルとその補修工事の対応に追われる状況でした・・・。

次回以降のブログでは、最前線での取り組み内容をお届けします。ぜひご期待ください!

<著者情報>
難波一夫
IHI/石川島播磨重工業 出身 の重工系技術士(金属部門)
中小企業診断士・労働安全コンサルタント・エネルギー管理士資格を保有
USC・PFBC ボイラの基本設計・材料評価・損傷解析を担当。 現在は火力発電設備の材料選定・余寿命評価等を得意分野とする技術経営コンサルタント