なぜ『超々』? 火力発電ボイラのカテゴリー
水は 22.12 MPa、374℃を超えると、液体と気体の境界がなくなり、密度が変化しながらも沸騰現象(気泡の発生)を起こさずに加熱される「超臨界流体」状態になります。
この超臨界状態をベースとして火力発電ボイラは蒸気条件(ボイラから送り出される圧力と温度)でカテゴリー分類されます。
※主蒸気圧力・主蒸気温度はタービン入口の圧力・温度
『超臨界圧(Super Critical)』を超える蒸気条件だから『超々(Ultra Super Critical)』
スーパーマンとウルトラマンが一緒になったみたいに凄いということなんです。
なお、USCは火力発電の一種ですが、供給安定性と燃料単価の経済的合理性からすべて石炭火力(微粉炭燃焼)となっています。

蒸気条件の変遷
火力発電ボイラの効率化は1950年から1959年にかけ、蒸気条件の高温高圧化(超臨界圧)により急速に進んだものの、その後の約30年間は進展がありませんでした。
この間、1980年から国家プロジェクトによりUSCプラントの早期実用化を目指した材料開発・実用化の取り組みが結実し、1993年に蒸気温度593℃の商用USCプラント(中部電力 碧南3号)が運転開始しました。
その後、蒸気条件は着々と向上し、2009年には世界最高水準の蒸気温度(620℃)である電源開発 磯子新2号が運転を開始。2020年6月には蒸気温度630℃の電源開発 竹原新1号が運転開始しました。
図 火力発電ボイラの蒸気条件の変遷
(出典)火力発電プラント用材料とその課題
蒸気条件が向上するとどうなるの?
1.高効率化により燃料費を削減できる
超臨界圧(SC)ボイラの送電端効率40~42%であるのに対し、600℃級USCの効率は45%前後まで向上します。3~5%効率が向上するということは、石炭の消費量を減らすことができるので、燃料費の削減に貢献します。一見、この数字は小さいように見えますが、大規模発電所では1時間に200トンの石炭を燃焼しますので、1時間で6~10トン、1日では144~240トン、1年なら52,560~87,600トンも石炭を節約できるんです。

2.CO2削減量を低減できる
石炭を節約できるということはCO2の削減に直結します。年間数十万トンレベルの削減効果となります。
3.国際競争力が上がる
USCは日本が世界トップレベルの技術。メーカーの競争力の源泉となります。
代表的なUSC発電プラント

電源開発株式会社 磯子火力発電所(60万kW×2)
右が新1号、左が新2号、いずれもIHI製ボイラです。
ボイラ担当として勤務していました。

電源開発株式会社 橘湾火力発電所(105万kW×2)
右が1号(IHI製)、左が2号(バブコック日立製)
どちらも主蒸気温度 600℃/高温再熱蒸気温度 610℃
たびたび出張させていただきました。
※写真はやくも(難波一夫)が撮影したものです。
個人的な感想
SCの誕生から30年もの歳月を経て実用化されたUSC。IHIをはじめとする重工各社も電力会社から相次いでプラントを受注し、経済性・環境性・エネルギーセキュリティのすべてを成立させた一大ビジネスへと結実しました。
私自身、橘湾火力1号機や磯子火力新1号機の設計がまさに佳境を迎えていた時期に、石川島播磨重工業(IHI)を退職。それから数年後、電源開発(J-POWER)へ転職し、思いもよらずUSCについて深く学び直す機会を得ることになります。
その当時の知見やエピソードについては、後編のブログで詳しくお話ししたいと思います。
<著者情報>
難波一夫(IHI/石川島播磨重工業 出身 技術士)
USC・PFBC ボイラの基本設計・材料評価・損傷解析を担当。 現在は火力発電設備の材料選定・余寿命評価等を得意分野とする技術コンサルタント
