リスクアセスメントとは
労働災害を防止するためには、事故が発生してから対策を講じるのではなく、事故が起こる前に危険を見つけ出し、適切な対策を実施することが重要となります。この考え方を体系的に進める手法が「リスクアセスメント」です。
リスクアセスメントでは、まず作業や設備に潜む危険性や有害性を洗い出し、その結果として発生する災害の重大性と発生可能性を評価します。そして、評価結果に基づいて優先順位を決め、設備改善や作業方法の見直し、保護具の使用などの対策を実施します。
でも、リスクアセスメントを実施しても事故をゼロにできるとは限らない。人間のミスや予想外の状況変化によって、残留リスクは必ず存在するからです。

リスクアセスメントしても残留リスクは残る
労働安全の世界では、実は「リスクアセスメントをやれば事故ゼロになる」とは考えていません。
むしろ、「対策を講じても残留リスクは必ず残る」ことを前提にしています。
例えば高所作業なら、
- 足場・手すりを設置する
- 墜落制止用器具(安全帯)を使用する
- 上下で作業しない
と段階的にリスクを下げても、
- 雨や湿気で足場が滑りやすくなる
- 作業者が正しく墜落制止用器具を使用しない
- 作業手順が守られず、想定外の動線が発生する
など作業者の行動、設備の状態、環境条件、作業段取り、そして複合的な要因が重なることで、墜落リスクは完全にはゼロになりません。
これらがリスクアセスメントで必ず残る “残留リスク” です。
残留リスクがあるかぎり、事故は完全にゼロにならないのです。
だからリスクアセスメントの目的は、『ゼロ化ではなく低減』なのです。

事故を減らすために
リスクアセスメントを実施しても、事故を完全になくすことはできません。
人間はミスをしますし、安全対策にも限界があります。また、想定外の事象が発生することもあります。
しかし、だからといってリスクアセスメントが無意味なわけではありません。
むしろ重要なのは、
- 死亡災害を防ぐ
- 重篤災害を防ぐ
- 災害発生時の被害を最小化する
ことです。
事故ゼロは理想として掲げるべき目標です。
しかし現実にはリスクが存在する以上、絶対的な安全を保証することはできません。
リスクアセスメントの本質は、リスクを正しく認識し、優先順位を付けて対策を講じることで、事故の発生確率と被害の大きさを可能な限り低減することにあります。

まとめ
リスクアセスメントは事故ゼロを保証する活動ではない。しかし、事故を減らすための重要な活動である。
<投稿者情報>
難波一夫
IHI/石川島播磨重工業 出身 の重工系技術士(金属部門)
中小企業診断士・労働安全コンサルタント・エネルギー管理士資格を保有
材料から設備を診る! 技術経営コンサルタント

