【重工系労働安全アーカイブ】「ゼロ災運動」の基本理念と3原則を徹底解説!安全と健康を先取りしてビヨンド・ゼロに挑戦

ゼロ災アイキャッチ Industrial safety

ゼロ災運動とは何か?

ゼロ災運動とは、人間尊重の基本理念に基づき、一人ひとりを大切にして一切の労働災害を許さず、職場の問題点を全員参加で解決し、安全と健康を先取りする実践活動です。

職場における災害や事故をなくすだけでなく、働く人の心と体の健康、そして「働きがい」までを高めていく――。それが日本の製造現場を中心に発展してきた「ゼロ災運動(ゼロ災害全員参加運動)」です。

「人間尊重の基本理念」に基づき、一人ひとりをかけがえのない大切な存在として扱い、誰もケガをせず、病気をしない明るくいきいきとした職場風土をつくることを究極の目的としています。


ゼロ災運動50周年を記念し、2024年に決定した新ゼロ災マーク
みんなで協力してゼロをつかみ取ろう。チームワークやコミュニケーションを発揮して元気で明るい職場づくり、活発なゼロ災活動実践への意気込みを表しています。

ゼロ災運動の基本理念「3原則」

ゼロ災運動は、以下の3つの原則(ゼロ・先取り・参加)を柱に成り立っています。

ゼロ災運動

1. ゼロの原則
「災害件数を半分にする」といった妥協した目標ではなく、「誰一人ケガ人を出さない(絶対ゼロ)」を究極の目標とします。作業者一人ひとりのことを親身になって考えれば、絶対ゼロ以外ありえないというのがゼロの原則です。

2. 先取りの原則
事故が起きてから対策する「後追い」ではなく、職場に潜むすべての危険(不安全行動・不安全状態)を行動する前に発見・把握・解決し、事故を未然に防ぐ(予防する)原則です。

災害発生の仕組み(危険要因と傷害事故の関係)は、ピラミッド状の構造で表されます。

危険要因
図 災害発生の仕組み

ピラミッドの底辺には、常に「不安全行動」や「不安全状態」といったすべての事故の根本原因である危険要因が存在しています。これが何らかのきっかけで表面化すると、底面にある「無傷害事故(ヒヤリ・ハット)」や、軽微な傷害から、中段の重傷害・休業災害、そして最上部の障害事故や死亡災害へとつながります。

死亡事故もヒヤリ・ハットも根本の危険要因は同じであり、事故や災害を未然に防止するためには、一番下にある不安全行動や不安全状態という危険要因を全員参加で発見・解決していくことが不可欠です。

3. 参加の原則
トップから現場の作業者、協力会社に至るまで、全員がそれぞれの立場で自主的・自発的に安全衛生の問題に取り組み、みんなで解決していくという姿勢です。

ゼロ災運動を成功させる「推進3本柱」

ゼロ災運動を現場に定着させ、形骸化させないためには、以下の3本柱が相互に連携(かけ算)することが不可欠です。

3本柱

トップの経営姿勢

安全衛生はまずトップの「ゼロ災害」・「ゼロ疾病」の確固たる決意に始まります。優れた安全衛生スタッフの選任、安全衛生への投資、安全衛生委員会への参加、安全パトロールで現場に行って第一線の実情を自分の目と足で確認しましょう。

ライン化の徹底

ゼロ災運動における「ライン化」とは、安全衛生や労働衛生の管理を専門スタッフだけに任せず、現場の管理監督者(ライン)が日々の本来業務として自ら徹底することです。

ラインは「部下に誰一人ケガをさせない」という強い決意を持ち、作業の中に安全衛生を組み込みます。具体的には、日々のミーティング等での視診・問診による健康確認(健康KY)や、部下の言動への気配りを行い、現場の実情を把握します。また、職場自主活動(KYTなど)を放置せず自ら指導・支援し、現場から上がってきた問題に対して迅速かつ的確に対応することが求められます。

職場自主活動の活発化

職場内の小集団などが、自分たちの仕事や職場に潜む危険要因や問題点を主体的に見つけ出し、話し合いを通じて解決する活動を指します。上からの指示待ちではなく、作業者一人ひとりが「参加の原則」に基づき、KYT(危険予知訓練)、指差呼称や職場ミーティングなどの自主活動に意欲的に取り組みます。

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「管理活動(タテの構造)」と「職場自主活動(ヨコの構造)」ががっちりとかみ合うことで、はじめてゼロ災運動は真の成果を上げます。

「ゼロを超えて(ビヨンド・ゼロ)」への挑戦

ビヨンド・ゼロ(Beyond Zero)とは、単に労働災害の「ゼロ(無災害)」を達成・維持するにとどまらず、その先にある「働く人びとの心身の健康と豊かさ(ウェルビーイング)」の実現を目指す、安全衛生管理の新しい理念やアプローチです。

従来のゼロ災運動が主に「ケガや事故をなくすこと」を最優先のゴールとしていたのに対し、ビヨンド・ゼロでは、安全の確保はもちろんのこと、快適で働きやすい職場環境づくり、心身の健康保持・増進、さらには個々の労働者の生きがいや創造性の発揮までを視野に入れます。

この概念の背景には、現代の労働環境において、身体的な災害防止だけでなく、メンタルヘルス不調の予防や労働衛生、生活の質の向上が極めて重要であるという認識があります。トップの経営姿勢やラインによるきめ細かなマネジメント、職場自主活動の活発化という推進3本柱を土台としながら、単なる「被災ゼロ」の枠を超え、人間尊重の基本理念をさらに高次元で実践するものとして位置づけられています。

つまり、すべての人が心身ともに健康で安心して働き続けられる、真に人間的な魅力にあふれた職場と社会を創り出していくことこそが、ビヨンド・ゼロの目指す本質的な姿です。

まとめ

ゼロ災運動は、トップから現場の作業者、協力会社まで、すべての人が参加する活動です。ゼロ災を実現するための仕組みと体制を整え、一人ひとりが「ゼロへの志」を持ち続けることが、安全文化を育てる土台になります。

今日の作業を無事に終え、笑顔で自宅に戻れるよう、全員参加でゼロ災に取り組んでいきましょう。

 

<執筆者情報>
難波一夫
IHI/石川島播磨重工業 出身 の重工系技術士(金属部門)
中小企業診断士・労働安全コンサルタント・エネルギー管理士資格を保有
材料から設備を診る! 技術経営コンサルタント