PFBCとは
PFBC(Pressurized Fluidized Bed Combustion)は、高圧容器内で流動床燃焼を行い、発生した蒸気で蒸気タービン(ST)を駆動すると同時に、ボイラ排ガスをガスタービン(GT)へ直接送り込む複合発電方式です。 一方、通常の微粉炭火力は常圧で微粉炭を燃焼し、蒸気タービンのみで発電します。 PFBCは、蒸気タービン+ガスタービンで発電する複合発電です。

電源開発 若松PFBCの模式図
(出典:電源開発パンフレット:若松加圧流動床複合発電プラント)
PFBCのメリット
1. 高効率
ボイラで発生した蒸気はSTを駆動し、同時に高温・高圧の排ガスを直接GTへ導入するため、燃焼で得られるエネルギーを蒸気と排ガスの二系統から回収できます。さらに、加圧燃焼によりガス体積が減少し伝熱効率が向上するほか、微粉炭火力で必要な大型通風機や排煙脱硫装置が不要となるため、所内動力(発電所が自分自身を動かすために使う電力)を低減できるため、送電端効率(発電所が実際に外部へ供給できる電力の効率)が高い特長があります。多炭種への適応性も高く、燃料の選択幅が広い点もPFBCの利点です。
2. 低公害
炉内に石灰石を投入することで燃焼と同時に脱硫が進むため、脱硫装置を設置することなくSOxを大幅に低減できます。また、燃焼温度が約850〜900℃と低く、NOxの生成が抑制されるため、排ガス処理設備の負荷を軽減できます。
3. コンパクト
PFBCは加圧燃焼により燃焼ガスの体積が小さく、ボイラやガス処理設備をコンパクトにできます。さらに、炉内で脱硫が行われるため排煙脱硫装置が不要となり、常圧微粉炭火力で必要な大型通風機も省略できます。これらの結果、プラント全体の占有面積(フットプリント)を大幅に抑えられるため、従来の微粉炭火力より小さな敷地で建設できます。
PFBCのデメリット(課題)
1. 設備構成が複雑
PFBCは、加圧流動床燃焼を行うために流動床炉全体を大型の圧力容器内に収めます。この圧力容器内にはボイラ、流動床、燃料・石灰石供給系、熱交換器など多くの機器が配置され、常圧ボイラより構成が複雑になります。ガスタービンへ高温・高圧ガスを供給するため、高温ガス清浄装置(セラミックフィルタやサイクロン)や逆洗装置、圧力制御系が追加されます。さらに蒸気タービンとガスタービンの二系統で発電する複合サイクルのため、蒸気系統とガス系統が並列に存在し、配管や制御も多層化します。
2.高コスト
PFBCは加圧下で流動床燃焼を行うため、炉本体を巨大な圧力容器内に収める必要があります。この容器は高圧に耐えるため、厚肉鋼板・高強度材料・高度な溶接品質が求められ、製作コストが高くなります。さらに、直径10m級の大型容器は輸送・据付にも制約が多く、建設費も増嵩します。

九州電力株式会社殿 苅田新1号向けPFBC圧力容器の陸揚げ作業
(出典:石川島播磨技報 May 1998 Vol.38 No.3)
3.層内管の摩耗(エロ―ジョン)
PFBCでは、層内に多数の伝熱管(層内管)を配置するため、流動媒体である砂・石灰石・未燃炭粒子が高速で衝突・擦過し、管表面に摩耗が発生します。加圧流動床は粒子速度が高く、粒子循環も強いため、常圧FBCより摩耗が進行しやすい構造です。さらに、CaO投入による化学反応で腐食摩耗が加速する場合もあり、肉厚減少の監視や材料選定、配置設計が運用上の大きな課題となります。摩耗は局所的に進むため、寿命予測や保守計画にも不確実性が生じます。
デメリットを上回る期待と日本の技術力による克服
PFBCは、当時の火力発電が直面していた「環境規制強化」と「効率向上」という二大課題を同時に解決できる革新的技術として期待されていました。石灰石投入による炉内脱硫と低温燃焼によるNOx抑制により、SOx・NOxを大幅に削減でき、脱硫装置不要というメリットも大きいものでした。
また、IGCCが未成熟だった時代に、石炭でガスタービンを回す複合発電は高効率化の切り札と見なされ、国の支援も強く、若松PFBCはその実証の場となりました。
さらに、圧力容器や材料、流動層技術など日本の重工メーカー(石川島播磨重工業(IHI)、三菱重工業、バブコック日立)が得意とする領域が多く、「日本なら課題を克服できる」という期待も後押ししました。若松実証で複合発電の成立や環境性能の高さが確認されたことで、より実用的に改良された苅田PFBCの商用化へとつながりました。
追記 PFBCでの経験
IHI の研究所から電力事業部に異動し、私のボイラデビューは若松 PFBC でした。炉内は非常に狭く、点検時に上を見上げると砂が落ちてきて目に入るなど、現場ならではの苦労を今でも鮮明に覚えています。層内管やサイクロン用に開発された高温ステンレス鋼 NAR-AH-4 のエロージョン減肉評価をはじめ実機健全性評価に没頭した日々は、技術者としての基盤を形成した貴重な経験でした。
その後、電源開発(J-POWER)へ転職し、若松研究所で勤務することになったのは、当時の自分には想像もできなかったキャリアの巡り合わせです。IHI 製 PFBC が 21 年もの長期運転を達成した背景には、当時の高度な設計力・製造力があり、石川島播磨重工業(IHI)出身として誇りに思うとともに、先輩方に育てていただいたことへの感謝の念は尽きません。
<著者情報>
難波一夫(IHI/石川島播磨重工業 出身 技術士)
USC・PFBC ボイラの基本設計・材料評価・損傷解析を担当。 現在は火力発電設備の材料選定・余寿命評価等を得意分野とする技術コンサルタント
