安全パトロールというと、
「安全担当者が現場を回って危険なところをチェックする」
という姿を思い浮かべるかもしれません。
しかし、実際には安全パトロールを行う人は一人とは限りません。
現場の職長が行うパトロール
会社の安全管理者や衛生管理者などが行うパトロール
そして、会社とは異なる視点を持つ外部専門家によるパトロール
同じ現場を見ても、誰が見るかによって、見えるものは変わります。
では、それぞれの安全パトロールには、どのような特徴があるのでしょうか。
今回は「誰が安全パトロールをするのか」という視点から考えてみます。
① 職長が行うパトロール=原風景との差分を見る
まずは、職長など現場を直接管理している人によるパトロールです。
最大の強みは、何といっても現場をよく知っていることでしょう。
どんな作業をしているのか。
どの設備を使うのか。
作業者は誰なのか。
普段と違う作業はないか。
現場を日常的に見ているからこそ、小さな変化にも気づくことができます。
一方で、弱点もあります。
現場を知りすぎていることです。
毎日見ている設備
毎日行っている作業
毎日通っている通路
それが当たり前(原風景;日常の風景)になってしまうと、
「昔からこうやっている」
「いつも問題なくやっている」
という感覚が生まれます。
本当は危険が潜んでいても、原風景の一部になってしまい、気づきにくくなることがあります。
現場をよく知っていることは最大の強みであり、同時に弱みにもなり得る。
ここが職長パトロールの特徴だと思います。

② 管理者によるパトロール=複数の現場を比較して見る
次に、安全管理者や衛生管理者など、現場を管理する立場から行うパトロールです。
職長よりも少し離れた視点から、現場を見ることができます。
一つの作業だけを見るのではなく、
設備は適切に管理されているか。
安全ルールは守られているか。
作業環境に問題はないか。
必要な安全対策が実施されているか。
といった視点で、現場全体を客観的に見ることができます。
これは大きな強みです。
例えば、ある職場では「普通」になっている状態でも、別の職場と比較すると、
「こちらのやり方の方が安全ではないか」
と気づくことがあります。
一方で、現場から離れるほど、実際の作業の細かな事情が見えにくくなる可能性もあります。
「なぜこの場所に物を置いているのか」
「なぜこの作業手順になっているのか」
現場には現場なりの理由があります。
だから管理者によるパトロールでも、ただ指摘するだけではなく、現場の人に話を聞くことが重要になります。

③ 外部専門家によるパトロール=原風景そのものを疑う
そして三つ目が、外部の専門家によるパトロールです。
外部の人が現場を見る最大の意味は、
その職場の「当たり前」に染まっていないこと
ではないでしょうか。
長く同じ職場にいると、
「これは昔からこうだから」
「この程度なら問題ない」
という感覚がどうしても生まれます。
しかし、初めて現場を見る人には、その「当たり前」がありません。
だからこそ、
「なぜ、ここにこれがあるのですか?」
「なぜ、この作業方法なのですか?」
という素朴な疑問を持つことができます。
ただし、外部専門家にも弱点があります。
その会社、その設備、その作業を最初から熟知しているわけではありません。
外から見れば危険に見えても、実際には別の安全対策が講じられている場合もあるでしょう。
逆に、設備固有の危険を知らなければ、重要なポイントを見落とす可能性もあります。
だから外部専門家が、
「私は安全の専門家だから分かっています」
という姿勢で現場を見るのは、あまり良いパトロールとは思いません。
まず現場の人に聞く。
作業を理解する。
そのうえで外部の視点を加える。
この順序が大切です。

では、誰がパトロールするのが一番いいのか
ここまで読むと、
「結局、誰がパトロールするのが一番いいの?」
という疑問が出てきます。
私は、一人に決める必要はないと思います。
職長には職長にしか見えないものがあります。
管理者には管理者にしか見えないものがあります。
外部専門家だから気づくこともあります。
つまり、
現場を知っている人の目 × 少し離れて見る人の目 × 外部から見る人の目
を組み合わせる。
これが安全パトロールの強みになります。
同じ設備でも、見る人が変われば着眼点が変わります。
安全対策というのは、一つの視点だけで完成するものではないからです。

「知っている人」と「知らない人」の両方が必要
安全パトロールでは、一見すると、
現場を詳しく知っている人ほど優秀
と思ってしまいます。
もちろん、現場を理解することは非常に重要です。
しかし安全という観点では、ときとして、
「知らないからこそ気づく」
ことがあります。
「なんでここに段差があるんですか?」
「なぜこのカバーは外してあるんですか?」
「どうして作業者はここを通るんですか?」
現場の人には当たり前すぎて疑問にも思わないことを、別の人が疑問に思う。
その質問が、新しい改善のきっかけになることがあります。
だから安全パトロールは、単に専門知識のある人が現場を採点する活動ではないと思います。
違う視点を現場に持ち込む活動でもある。
そう考えると、安全パトロールの意味が少し変わって見えてきます。

大切なのは「誰が悪いか」を探すことではない
そして、誰がパトロールする場合でも共通して大切なことがあります。
それは、
人を責めるためのパトロールにしないこと
です。
「誰がこんなことをしたんだ」
ではなく、
「なぜ、この状態になったのか」
を見る。
作業者の意見を聞く。
一緒に原因を考える。
改善方法を考える。
そして良い取り組みについては、きちんと評価する。
安全パトロールは「監視」ではありません。
現場と一緒に、安全な作業環境を作っていく活動です。
誰がパトロールする場合でも、この基本姿勢は変わらないと思います。

まとめ 違う「目」を組み合わせる
職長、管理者、外部専門家
それぞれのパトロールには、強みと弱みがあります。
職長は、現場を深く知っている。
管理者は、現場を少し離れたところから見ることができる。
外部専門家は、現場の「当たり前」を疑うことができる。
どれか一つが正解ということではありません。
むしろ、それぞれの違いを理解して組み合わせることで、今まで見えなかった危険が見えてくるのではないでしょうか。
安全パトロールで大切なのは、
「誰が一番多く指摘したか」ではなく、「違う目で見ることで、何に気づけたか」。
そして、その気づきを現場の改善につなげることです。
安全パトロールには、いろいろな「目」があった方がいい。
私はそう考えます。

安全くんのひとこと
「いつもの現場を、いつもと違う目で見てみよう!」
職長の目
管理者の目
外部専門家の目
違う視点を組み合わせれば、今まで見えなかった危険が見えてきます。
今日も安全確認、よし!

<執筆者情報>
難波一夫
IHI/石川島播磨重工業 出身 の重工系技術士(金属部門)
中小企業診断士・労働安全コンサルタント・エネルギー管理士資格を保有
材料から設備を診る! 技術経営コンサルタント
