層内管の設計指針
PFBC の層内管は、流動媒体(ベッド材)の流動による摩耗(エロージョン)が支配的であることから、肉厚は『摩耗寿命』ベースで決定します。具体的には、蒸気内圧で決定される必要最小肉厚(tsr)に摩耗減肉分を余肉として加えた管仕様(管の外径と肉厚)とします。摩耗は局所的に進行するため、最小肉厚の監視が重要となります。
実験摩耗室試験による候補材のスクリーニング
各種層内管候補材を短時間に評価するため、実機を模擬した流動層式摩耗試験機を試作し、加速試験法を検討しました。実機流動速度(1m/s)では、管表面に形成する酸化スケールが摩耗に対して保護効果を示し、摩耗減肉量が常温の約1/2に減少することがわかりました。

図 試験温度と摩耗量の関係
また、流動速度を高めると5m/sを境界に摩耗挙動が変化することから、最大5倍の加速条件で摩耗試験できることがわかりました。

図 速度と摩耗量の関係
層内管の選定
蒸発器管のメタル温度は500℃未満であり、摩耗に対して保護効果をしめす酸化被膜が管表面に形成されません。そのため、Ni基自溶性合金を管表面に施工し、所定の摩耗寿命を確保します。
過熱器管、再熱器管のメタル温度は500℃以上であり、摩耗に対して有効な保護被膜が形成されることから、溶射は適用せず、使用温度に適した材料(火STBA28、ステンレス鋼)に摩耗に対する余肉を備えて使用します。

図 使用温度と摩耗寿命
追記 研究と基本設計
IHI 技術研究所で PFBC 層内管候補材のエロージョン評価を担当した後、電力事業部 基本設計部へ異動し、九州電力殿 苅田新1号 PFBC の層内管材料選定に携わることになりました。試験データをどのように基本設計へ落とし込むか、先輩方が示すロジカルな判断手法は実践的で、材料技術と設計思想の接続を深く理解する契機となりました。
また、相生工場の製造部や各ベンダーとの調整を通じて、設計・製造・品質保証が一体となって成立する IHI のものづくりの本質を学び、これらの経験はその後の技術者としてのビジネス基盤となりました。
<著者情報>
難波一夫(IHI/石川島播磨重工業 出身 技術士)
USC・PFBC ボイラの基本設計・材料評価・損傷解析を担当。 現在は火力発電設備の材料選定・余寿命評価等を得意分野とする技術コンサルタント