【重工系労働安全アーカイブ#28・安全パトロール編⑤】安全書類・掲示物の確認|作業手順書・KY・リスクアセスメントは現場で生きているか

安全書類アイキャッチ Industrial safety

安全パトロールでは設備や作業状態だけでなく、安全書類や掲示物を確認することもあります。

作業手順書は整備されているか。

KY(危険予知)活動の記録はあるか。

リスクアセスメントは実施されているか。

必要な安全標識や掲示物は設置されているか。

いずれも大切な確認項目です。

しかし、ここで考えてみたいことがあります。

「書類がそろっていれば、その現場は安全なのでしょうか?」

立派な作業手順書があっても実際の作業が手順書と違っているかもしれません。

KY記録に全員の名前が書かれていても作業者が危険を十分に理解していないかもしれません。

リスクアセスメントを実施していても決められた対策が現場で実行されていないかもしれません。

安全パトロールで大切なのは、書類の有無を確認するだけでなく、書類に書かれた安全対策が実際の作業に反映されているかを確かめることです。

今回は、安全書類と掲示物を通じて、現場の安全活動の実効性を確認するポイントを考えてみます。

安全書類は「作っただけ」では意味がない

安全書類の目的は何でしょうか。

監査で指摘されないためでしょうか。

安全パトロールで見せるためでしょうか。

もちろん、法令や社内規程で求められる書類を適切に整備・管理することは必要です。

しかし、安全書類の本来の目的は作業に潜む危険を明らかにし、安全な作業方法を関係者に伝え、実行につなげることにあります。

例えば、次のような状態を考えてみます。

  • 作業手順書はあるが、現場では使われていない。
  • KY記録は毎日作成されているが、内容がほとんど同じ。
  • リスクアセスメントは実施されているが、対策が実行されていない。
  • 安全標識は掲示されているが、作業者が内容を理解していない。

書類だけを確認すれば問題がないように見えるかもしれません。

しかし、実際の安全管理としては不十分です。

「書類があること」と「書類が現場で役立っていること」は別なのです。

安全書類はつくっただけではダメ

作業手順書 現場の作業と一致しているか

作業手順書は安全な作業を行うための基本となる資料です。

作業の順序、使用する設備や工具、必要な保護具、作業上の注意点などを定めています。

安全パトロールでは、まず作業手順書が整備され、必要なときに確認できる状態になっているかを見ます。

しかし、本当に重要なのはその先です。

「作業手順書に書かれていることと実際の作業が一致しているか」

を確認します。

例えば、設備の点検作業について、

「動力源を遮断し、必要な安全措置を講じてから点検する」

と手順書に書かれていたとします。

ところが、実際の作業では一部の安全措置が省略されているかもしれません。

この場合、手順書が存在していても、安全な作業が確保されているとはいえません。

また、設備の改造や作業方法の変更によって、手順書が実態に合わなくなっている場合もあります。

安全パトロールでは、次のような点を確認したいです。

  • 作業手順書は現行の設備や作業方法に対応しているか。
  • 作業者は手順書の内容を理解しているか。
  • 危険な作業の手順や安全上の急所が明確になっているか。
  • 実際の作業で手順が守られているか。
  • 作業方法の変更が手順書に反映されているか。

作業者へ、

「この作業で特に注意するところはどこですか?」

「実際に作業していて、手順書と違うところはありませんか?」

と尋ねてみるのもよいでしょう。

手順書が守られていない場合には、単に作業者を注意するだけでなく、守れない理由がないかを確認します。

作業スペースが不足している。

必要な工具が使いにくい。

手順書が実際の設備と合っていない。

こうした問題が隠れているかもしれません。

作業手順書を守らせることと守ることのできる作業環境を整えることは、両方とも重要なのです。

作業手順書と一致しているか

KY記録 今日の作業の危険を考えているか

KY活動は作業前に危険を予測し、必要な対策を共有する活動です。

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安全パトロールではKY記録の作成状況を確認することがあります。

実施日、作業内容、危険のポイント、対策、参加者などが記録されているか。

こうした確認も必要です。

しかし、記録の内容にも目を向けたいです。

例えば、KY記録に毎日、

「転倒注意」

「安全確認徹底」

「保護具着用」

と書かれていたとします。

もちろん、いずれも大切なことです。

しかし、作業内容が毎日違うにもかかわらず、同じ記載ばかりであればKY活動が形骸化している可能性があります。

例えば、高所での配管補修作業なら、

「工具が落下し、下にいる作業者に当たる」

「足場の開口部から墜落する」

といった、具体的な危険を考える必要があります。

そのうえで、工具の落下防止措置や立入禁止措置、墜落防止措置など、実施すべき対策を確認します。

安全パトロールでは、

「今日の作業で、一番気をつけることは何ですか?」

「KYで決めた対策は、どこで実施していますか?」

と尋ねてみます。

作業者が具体的に答えられるか。

決めた対策が現場で実行されているか。

そこまで確認したいです。

KY記録で大切なのは、きれいに記入されていることではなく、今日の作業の危険を具体的に考え、その対策を実行していることです。

KY記録

リスクアセスメント 決めた対策が実行されているか

リスクアセスメントは、職場に潜む危険性や有害性を特定し、リスクを見積もり、必要な低減措置を検討・実施する取り組みです。

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安全パトロールでは、その記録を確認することもあります。

しかし、リスクアセスメント表が作成されているだけで安心してはいけません。

例えば、回転機械による巻き込まれの危険に対し、

「安全カバーを設置する」

という対策を決定していたとします。

ところが、現場では安全カバーが設置されていない。

あるいは、設置されていても作業時には取り外されている。

このような場合、リスクアセスメントの結果が安全対策として十分に機能していません。

安全パトロールでは、

  • 作業に必要な危険源が特定されているか。
  • リスクに応じた低減措置が検討されているか。
  • 決定した対策が実際に講じられているか。
  • 対策の実施後に、残るリスクが確認されているか。
  • 設備や作業方法の変更に応じて見直されているか。

といった点を確認します。

また、対策の内容にも注意が必要です。

例えば、危険な可動部分への接触リスクに対して、

「注意して作業する」

という対策だけでは、十分とは限りません。

危険源を除去できないか

隔離や防護によって接触を防止できないか

設備的な対策を優先して検討することが大切です。

安全パトロールはリスクアセスメントで決めた対策が現場で機能しているかを確認し、必要な見直しにつなげる機会でもあります。

リスクアセスメントは評価表を完成させることがゴールではありません。リスクを実際に低減することが目的なのです。

なお、リスクアセスメントの実施・記録・保存・周知に関する法令上の義務は、対象となる作業や物質などによって異なります。特にリスクアセスメント対象物である化学物質については、法令に基づく記録保存や労働者への周知が求められます。

リスクアセスメント

安全掲示物 掲示しているだけになっていないか

現場には、さまざまな安全掲示物があります。

例えば、

  • 作業主任者の氏名や職務
  • 立入禁止や危険区域の表示
  • 保護具の使用に関する表示
  • 緊急連絡先や避難経路
  • 作業上の注意事項

などです。

これらの掲示物は、必要な情報を作業者に伝え、安全な行動へつなげる役割を持っています。

安全パトロールでは、必要な掲示や周知が適切に行われているかを確認します。

ただし、掲示物は設置されていればよいというものではありません。

文字が小さくて読めない

資材の陰に隠れている

古い情報がそのまま残っている

掲示物が多すぎて、重要な情報が埋もれている

こうした状態では、十分な効果が期待できません。

例えば「立入禁止」と表示されている場所に、作業者が日常的に出入りしていたとします。

この場合、単に掲示を確認するだけでは不十分です。

なぜ立入禁止なのか

誰が立ち入る必要があるのか

立入りを防止する措置は適切か

必要な作業を安全に行うための手段は確保されているか

そこまで確認する必要があります。

また、外国人労働者がいる職場では、言語の違いによって情報が正しく伝わっていない可能性にも注意したいものです。

文字だけでなく、図記号や写真などを活用する工夫も有効でしょう。

掲示物は「貼ること」が目的ではなく、危険や注意事項を正しく伝え、安全な行動につなげるためのものです。

なお、法令で掲示や周知が求められる事項と事業場が自主的に掲示する事項は区別して確認する必要があります。

安全掲示物

書類と現場の実態を照合しよう

ここまで、作業手順書、KY記録、リスクアセスメント、掲示物について考えてきました。

これらに共通するのは、

「書類に書かれていることが、現場で実行されているか」

という視点です。

安全パトロールでは、次の3つを照らし合わせると分かりやすいと思います。

① 書類を見る

作業手順書、KY記録、リスクアセスメント表などに何が書かれているかを確認する。

② 現場を見る

書類に記載された安全対策が、実際の設備や作業に反映されているかを確認する。

③ 作業者に聞く

作業者が危険を理解し、決められた対策を実行できているかを確認する。

例えば、次のような場合です。

表

書類だけでは分からないことがあります。

現場を見るだけでも分からないことがあります。

そして、作業者の話を聞くことで初めて分かることもあります。

書類・現場・作業者の3つを結びつけて確認することが、安全パトロールの実効性を高めるのではないでしょうか。

書類と現場の商号

書類の不備を指摘するだけで終わらせない

安全パトロールで書類の不備を発見すると、

「手順書を改訂してください」

「KY記録をきちんと書いてください」

「掲示物を更新してください」

と指摘することがあります。

もちろん、必要な改善です。

しかし、書類を修正しただけで問題が解決するとは限りません。

作業手順書が古くなっていたなら、実際の作業方法を確認し、適切な手順へ見直す。

KY活動が形式的になっていたなら、現場の危険を具体的に考える方法を改善する。

リスクアセスメントの対策が未実施なら、実施できていない理由を確認し、必要な設備改善や管理措置につなげる。

掲示物が読まれていないなら、掲示方法や情報の伝え方を見直す。

このように、書類の不備をきっかけに、現場の安全活動そのものを改善することが大切です。

また、書類が実態に合っていない場合には、作業者の判断だけに任せず、関係する管理監督者や設備担当者などと対応を検討する必要があります。

安全パトロールは書類を直すための活動ではありません。書類を通じて、実際の安全を改善する活動なのです。

書類の不備を指摘するだけで終わらない

まとめ 安全書類は現場で使われてこそ意味がある

安全パトロールでは、作業手順書、KY記録、リスクアセスメント表、安全掲示物などを確認します。

これらは、現場の安全を支える大切な仕組みです。

しかし、書類がそろっていることと安全な作業が実行されていることは同じではありません。

作業手順書は、実際の作業と合っているか。

KY記録は、その日の危険を捉えているか。

リスクアセスメントは、リスク低減につながっているか。

安全掲示物は、作業者へ必要な情報を伝えているか。

そして、それらが日々の作業で生かされているか。

ここまで確認したいものです。

安全書類は、作成するために存在するのではありません。

現場の危険を減らし、作業者が安全に働くために存在しています。

安全パトロールは「書類があるか」から「書類が現場で生きているか」へ。

安全書類と実際の作業を照合することによって、書類だけでは分からなかった問題が見えてくるのではないでしょうか。

安全書類 まとめ

安全くんのひとこと

「書類に書いてあるから安全とは限らないよ!」

手順書と作業を照らし合わせよう。

KYで決めた対策を現場で確認しよう。

リスクアセスメントを改善につなげよう。

書類と現場の一致、ヨシ!

安全くん

参考資料

  • 厚生労働省『危険性又は有害性等の調査等に関する指針』
  • 厚生労働省『化学物質対策に関するQ&A(リスクアセスメント関係)』
  • 労働安全衛生法・労働安全衛生規則

※安全書類の作成・保存・掲示・周知に関する法的義務は、業種、作業内容、対象物質などにより異なります。実際の適用に当たっては、関係法令等をご確認ください。