フォークリフトは工場や倉庫、物流施設などで広く使用されている荷役運搬機械です。
重い荷物を持ち上げ、狭い場所でも運搬できる便利な機械ですが、ひとたび事故が発生すると重大な災害につながるおそれがあります。
例えば、
- 後退してきたフォークリフトに作業者が接触する。
- フォークリフトと棚や柱の間に作業者が挟まれる。
- 持ち上げた荷が崩れ、近くの作業者に当たる。
- 荷物によって前方が見えないまま走行する。
- 積載した荷が高すぎたり、偏っていたりして車体が不安定になる。
こうした危険は、運転者の注意不足だけで発生するとは限りません。
作業者とフォークリフトの通行経路が重なっている
見通しの悪い交差点がある
荷役場所の近くを人が通らなければならない
このような作業環境そのものに問題がある場合もあります。
フォークリフトの安全パトロールでは、運転者の行動だけでなく、車両と人がどのような位置関係で作業しているかを見ることが重要です。
今回は、フォークリフトによる接触・挟まれ災害を防ぐため、安全パトロールで確認したいポイントを考えてみます。
フォークリフトと歩行者の動線は分離されているか
フォークリフトの安全パトロールでまず確認したいのが走行経路と歩行者の通路です。
工場では、フォークリフトが資材を運搬しているすぐ横を、作業者が歩いていることがあります。
特に注意したいのは、次のような場所です。
- 工場の出入口やシャッター付近
- 建屋内の通路や交差点
- 資材置場や製品置場の周辺
- トラックの積込み・荷卸し場所
- フォークリフトが方向転換する場所
これらは車両と歩行者が接近しやすい場所です。
例えば、工場の出入口で作業者が建屋から出てきたところへフォークリフトが通りかかったとします。
運転者が歩行者に気づくのが遅れれば、接触事故につながるかもしれません。
こうした場所では、床面の区画線や防護柵などによって、歩行者とフォークリフトの動線をできるだけ分離することが重要です。
安全パトロールでは、
「歩行者が車両の走行経路へ入らずに移動できるか?」
「通路の区画線は明確になっているか?」
「やむを得ず横断する場所では、安全確認の方法が決まっているか?」
といった点を確認します。
また、通路が区画されていても、資材が置かれて歩けなくなっている場合があります。
その結果、作業者がフォークリフトの走行経路を歩いてしまうことも考えられます。
歩行者に注意を呼びかけるだけでなく、人と車両が接近しにくい通路をつくることが大切なのです。

フォークリフトの死角を確認しよう
フォークリフトには運転席から見えにくい場所があります。
特に、荷物を積載しているときには荷物が運転者の視界を遮ることがあります。
また、後退時には運転者が後方を十分に確認できていない場合があります。
安全パトロールでは、実際の運搬作業を観察しながら、運転者の視界を妨げるものがないかを確認します。
例えば、大型の木箱をフォークに載せて運搬しているとします。
荷物が高く積まれているため、前方の歩行者が見えにくい状態かもしれません。
そのまま前進すれば接触事故につながるおそれがあります。
このような場合には、荷姿や運搬経路を見直し、必要に応じて進行方向を変更するなど、安全な方法を検討する必要があります。
ただし、後退すれば必ず安全というわけではありません。
後方にも死角があります。
進行方向の安全を十分に確認できることが重要です。
安全パトロールでは、次のような点に着目します。
- 荷物によって前方の視界が遮られていないか。
- 後退時に進行方向の安全確認ができているか。
- 交差点や曲がり角に見通しの悪い場所はないか。
- 必要なカーブミラーなどが適切に設置されているか。
- 警報装置や回転灯などが周囲の作業環境に応じて機能しているか。
カーブミラーや警報装置は有効な補助設備ですが、それだけで安全が確保できるわけではありません。
見通しの悪い場所では車両と歩行者の接近を防ぐ構造的な対策も考えましょう。

フォークリフトと設備の間に挟まれる危険はないか
フォークリフトの災害では、車両との接触だけでなく、設備や荷物との間に挟まれる危険にも注意が必要です。
例えば、資材置場でフォークリフトが荷物を移動させているとします。
その近くに作業者が立っていた場合、車両が動いたり、荷が移動したりすることで、作業者が棚や柱との間に挟まれるおそれがあります。
また、フォークリフトは小回りが利く一方、旋回時には車体後部の動きにも注意が必要です。
運転者が前方の荷物に集中していると、車体後方の危険に気づかない場合があります。
安全パトロールでは、
「車両の旋回範囲内に人が立つ場所はないか?」
「荷役作業中に、作業者が車両と設備の間へ入っていないか?」
「荷物の位置を直すため、作業者がフォークの近くへ手を出していないか?」
といった点を確認します。
また、運転者が運転席から身を乗り出し、マストやヘッドガードとの間に挟まれる危険にも注意が必要です。
ここで重要なのは、運転者だけを指導するのではなく、周囲の作業者が安全な位置で作業できるようになっているかという視点です。
人が接近しなければ作業できない状態なら、作業方法そのものを見直す必要があるかもしれません。

荷物の積載状態と運搬方法は適切か
フォークリフトでは、荷物の積載状態も重要な安全確認項目です。
例えば、
荷物が片側に偏っている
荷物の重心が高い
パレットが破損している
荷物を高く持ち上げたまま走行している
こうした状態は、荷崩れや車体の不安定化につながるおそれがあります。
特に重量物を扱う工場では、積載重量だけでなく、荷の重心位置や支持方法にも注意する必要があります。
フォークリフトには、荷の重心位置などによって定まる許容荷重があります。
単に荷物の重量が車両の最大荷重以下であれば、どのような状態でも安全に運搬できるというわけではありません。
また、長尺の鋼材や配管などを運搬する場合には、荷の長さや重心位置によって旋回時の接触範囲が大きくなることもあります。
安全パトロールでは、
- 荷物の重量と重心位置は適切か。
- 荷物が安定して支持されているか。
- 荷崩れや落下のおそれはないか。
- 荷の下や周囲に作業者が立ち入っていないか。
- 荷を必要以上に高く上げたまま走行していないか。
といった点を確認します。
また、フォークや荷の下には、原則として人を立ち入らせてはいけません。
フォークリフトが荷物を運べることと安全に運べることは同じではないのです。

走行路面や荷役場所に危険はないか
フォークリフトの安全は車両や運転者だけで決まるものではありません。
走行する床面や荷役場所の状態も重要です。
例えば、
- 床面に段差や凹凸がある。
- 水や油によって滑りやすくなっている。
- 通路幅が狭く、設備との距離が十分でない。
- スロープや傾斜のある場所で荷役作業をしている。
- トラックの荷台や荷役用プラットホームの端部に接近している。
こうした場所では、走行安定性や停止・旋回時の安全性が低下するおそれがあります。
また、床面の損傷や段差によって積載した荷物が揺れ、荷崩れにつながる場合もあります。
安全パトロールでは車両の走行を観察するだけでなく、実際に使用している経路の状態を確認しましょう。
ただし、確認のために稼働中のフォークリフトへ不用意に接近してはいけません。
安全な場所から観察し、必要に応じて車両を安全に停止させてから確認します。
フォークリフトの運行経路も安全設備の一部として考えることが大切なのです。

フォークリフトの点検と運転資格を確認しよう
安全パトロールではフォークリフト自体の管理状態も確認します。
労働安全衛生規則ではフォークリフトについて作業開始前点検や定期自主検査が定められています。
作業開始前には制動装置や操縦装置、荷役装置、車輪、灯火装置、警報装置など、定められた事項の点検が必要です。
また、1か月以内ごとの定期自主検査、1年以内ごとの特定自主検査が必要です。
安全パトロールでは、
「点検は実施されているか?」
「異常を発見した場合、修理などの必要な措置が講じられているか?」
「定期自主検査の記録や特定自主検査標章は適切に管理されているか?」
といった点を確認します。
運転資格の確認も重要です。
フォークリフトの運転業務には、最大荷重に応じて必要な資格・教育が定められています。

ただし、資格を持っていることと、安全に運転できていることは同じではありません。
慣れによる確認不足や、不適切な作業方法がないかも確認する必要があります。

作業計画と現場の運用は一致しているか
フォークリフトを使用する作業では作業場所や地形、機械の能力、荷の種類などに適合した運行経路と作業方法を定めた作業計画が必要です。
安全パトロールでは、この作業計画が実際の作業に反映されているかを確認します。
例えば、運行経路が決められていても、実際には近道のために歩行者通路を横切っているかもしれません。
また、荷役場所が変更されたのに作業計画が見直されていない場合も考えられます。
特に複数の作業者が関わる荷役作業では、作業指揮者の配置や役割、誘導者の合図なども重要になります。
誘導者が必要な場面ではあらかじめ合図の方法を決め、運転者と誘導者が共通認識を持って作業できるようにします。
なお、誘導者を配置することが必要な場合でも、歩行者との動線分離などの対策を省略してよいわけではありません。
作業計画があることだけでなく現場の動きと一致しているかを確認することが大切です。

駐車・停止時の状態にも注意しよう
フォークリフトの危険は走行中だけではありません。
運転者が運転席を離れる際の措置にも注意が必要です。
例えば、フォークを高い位置にしたまま車両を放置している
駐車ブレーキがかかっていない
運転者が離れているのに原動機(エンジン)が停止していない
こうした状態は、フォークへの接触や車両の逸走につながるおそれがあります。
労働安全衛生規則では、運転者が運転位置から離れる場合、フォークなどの荷役装置を最低降下位置に置き、原動機の停止や逸走防止措置を講じることが定められています。
安全パトロールでは、駐車場所や車両の停止状態についても確認しましょう。

フォークリフトの安全パトロール 何を見るか
ここまでの確認事項を整理してみます。

安全パトロールではこれらを確認するだけでなく、危険な状態が発生している背景にも目を向けましょう。
なぜ歩行者と車両の動線が交錯しているのか
なぜ見通しの悪い場所を通らなければならないのか
なぜ荷役作業中に作業者が車両へ接近する必要があるのか
その理由を確認することで、具体的な改善策につながります。

指摘するだけでなく 接触しない仕組みをつくろう
フォークリフトによる接触・挟まれ災害を防ぐためには、運転者や歩行者への注意喚起だけでは限界があります。
例えば、
「フォークリフトに注意」
という掲示を設置したとします。
もちろん、注意喚起として一定の意味はあります。
しかし、歩行者がフォークリフトの走行経路を通らなければならない状態が変わらなければ、接触の危険は残ります。
そのため、必要に応じて、
- 歩行者通路と車両通路を物理的に分離する。
- 荷役作業区域への立入りを制限する。
- 見通しの悪い交差点の構造や通行方法を見直す。
- 荷役場所を変更し、作業者と車両が接近する機会を減らす。
- 必要な誘導方法や安全設備を整備する。
といった対策を検討します。
「注意して運転する」「周囲を確認する」だけでなく、人とフォークリフトが接触しにくい作業環境をつくることが重要です。
安全パトロールはこうした改善のきっかけになる活動でもあるのです。

まとめ フォークリフトと人の接点を見よう
フォークリフトは工場や倉庫で欠かすことのできない荷役運搬機械です。
一方で、重量物を持ち上げながら移動するため、接触や挟まれ、荷崩れ、転倒などの危険があります。
安全パトロールでは、運転資格や車両の点検状態を確認することも大切ですが、それだけでは十分ではありません。
歩行者と車両の動線は分離されているか
死角のある場所で接触する危険はないか
荷役作業中に人が挟まれる場所はないか
荷物の積載状態や運搬方法は適切か
そして、人とフォークリフトが接近する必要のない作業環境になっているか
ここまで確認しましょう。
フォークリフトの安全パトロールは「運転者が注意しているか」だけでなく、「人と車両が接触しない仕組みになっているか」を見る活動です。
運転者の注意力だけに安全を委ねるのではなく、設備・動線・作業方法を改善する。
その積み重ねが、接触・挟まれ災害の防止につながるのではないでしょうか。

参考資料
- 厚生労働省『陸上貨物運送事業における荷役作業の安全対策ガイドライン』
- 岩手労働局・花巻労働基準監督署『フォークリフトによる労働災害防止のためのポイント』(2024年12月)
- 厚生労働省『労働安全衛生規則』第151条の3〜第151条の26
- 千葉労働局・柏労働基準監督署『物流センターにおける労働災害防止に関する資料』
※本記事では一般的なフォークリフトを想定しています。実際の対策は車両の方式、作業内容、荷の種類、現場の状況に応じて検討する必要があります。
安全くんのひとこと
「フォークリフトと人の通り道、分けられているかな?」
死角を確認しよう。
挟まれる場所をなくそう。
荷役作業の周囲に人を近づけない工夫をしよう。
人と車両の動線分離、ヨシ!

