【重工系労働安全アーカイブ#27・安全パトロール編④】作業者との信頼関係|安全パトロールで大切な声かけと指摘の伝え方

作業者との信頼関係アイキャッチ Industrial safety

安全パトロールで現場を回っていると、さまざまな不安全状態や不安全行動に気づくことがあります。

通路に資材が置かれている。

保護具が適切に使用されていない。

作業手順が守られていない。

こうした問題を発見したとき、どのように作業者へ伝えているでしょうか。

「何をやっているんだ!」

「どうしてルールを守らないんだ!」

厳しく注意すれば、その場では改善されるかもしれません。

しかし、作業者が納得していなければ、パトロールが終わった途端に元へ戻ってしまうことも考えられます。

さらに、パトロールする人が来ると作業者が身構え、本当の問題を話さなくなってしまうかもしれません。

安全パトロールで大切なのは不安全事項を指摘することだけではありません。作業者との信頼関係を築き、安全を改善する行動につなげることです。

今回は、安全パトロールを実施する側の態度と指導の仕方について考えてみます。

安全パトロールは「あら探し」ではない

安全パトロールで不安全事項を何件発見したかという数字ばかりを気にしていないでしょうか。

もちろん、危険を発見することは重要です。

しかし、指摘件数を増やすことが目的になってしまうと、作業者の些細なミスばかりが目につくようになります。

「また何か指摘されるのではないか」

「余計なことは話さない方がよい」

作業者がそう感じるようになれば、現場の本当の問題は見えにくくなります。

現場の危険を最もよく知っているのは、そこで毎日作業している人たちです。

作業者が安心して問題を話せる関係をつくることが、より効果的な安全パトロールにつながります。

パトロールする人は『現場を取り締まる人』ではなく『現場の安全を支援する人』でありたいものです。

あらさがしではない

まずは挨拶と声かけから始めよう

安全パトロールでは現場へ入るとすぐに設備や作業状態の確認を始めることがあります。

しかし、作業者から見れば、突然現れた人が無言で作業を観察し、記録していることになります。

これでは、監視されているように感じても不思議ではありません。

まずは挨拶をする。

「お疲れさまです」

「今日はどんな作業をしていますか?」

「作業で困っていることはありませんか?」

こうした自然な声かけが、作業者との距離を縮めます。

ただし、作業の邪魔にならないことが前提です。

クレーン操作や玉掛け作業、回転機械の操作など、集中力を必要とする作業中に不用意に話しかけることは避けなければなりません。

安全なタイミングを見計らって、声をかけることが大切です。

まず挨拶と声がけ

指摘するときは「人」ではなく「行動と状態」を見る

不安全行動を発見したとき、伝え方によって作業者の受け止め方は変わります。

例えば、通路に資材が置かれていたとします。

望ましくない伝え方

「どうしてこんなところに資材を置くんだ!」

「整理整頓ができていないじゃないか!」

このような言い方では、作業者自身を責めているように受け取られることがあります。

望ましい伝え方

「この資材があると、通行するときにつまずく危険がありますね」

「ここに置いているのには、何か理由がありますか?」

「安全に置ける場所を一緒に考えましょう」

大切なのは問題になっている状態を具体的に示し、なぜ危険なのかを説明することです。

そして、作業者の事情にも耳を傾けます。

資材置き場が遠い。

作業スペースが足りない。

仮置き場所が決まっていない。

こうした背景があるかもしれません。

単に「片付けなさい」と指摘するだけでは、根本的な改善につながらない場合があります。

不安全行動の背景には、設備や作業環境、作業方法の問題が隠れていることもあるのです。

望ましい伝え方

作業者の話を最後まで聞こう

安全パトロールではパトロールする側が一方的に説明してしまいがちです。

しかし、現場の状況を十分に理解しないまま指導すると的外れな指摘になってしまうことがあります。

例えば、作業者から、

「この治具は使いにくいんです」

「手順書どおりでは作業が難しいんです」

という話が出てきたとします。

そのとき、

「決まりだから守りなさい」

と答えるだけでは、問題は解決しません。

なぜ使いにくいのか。

なぜ手順どおりにできないのか。

そこに危険を生む原因があるかもしれません。

作業者が話している途中で否定せず、まず状況を確認する。

分からないことは分からないと認める。

現場の経験や知恵を尊重する。

そのような態度が信頼関係を育てます。

作業者の話を聞くことも安全パトロールの重要な技術なのです。

作業者の話を聞く

良い点を見つけたら具体的に評価しよう

安全パトロールで悪いところばかり探していないでしょうか。

現場には、評価すべき良い取り組みも数多くあります。

例えば、

  • 工具や資材が使いやすく整理されている。
  • 作業者同士が適切に声をかけ合っている。
  • 作業前に危険箇所を確認している。
  • 作業者の工夫で安全性が改善されている。

こうした取り組みを発見したら、積極的に評価したいものです。

単に「良いですね」と言うだけでなく、

「工具の置き場所が決まっているので探す時間も減りそうですね」

「作業前にお互い確認しているのは良い取り組みですね」

と、具体的に伝えます。

何が良かったのかを示すことで、その行動を続ける意味が伝わります。

また、優れた工夫は、他の職場へ紹介できるかもしれません。

安全パトロールは、問題点を見つけるだけでなく現場の良い取り組みを発見して広げる機会でもあるのです。

良い点を評価する

危険な行動には毅然と対応する

ここまで、作業者との信頼関係の大切さを説明してきました。

しかし、信頼関係を大切にすることと、危険な行動を見逃すことは違います。

例えば、回転機械に手を近づけている。

吊り荷の下へ人が立ち入ろうとしている。

墜落の危険がある場所で必要な安全措置が取られていない。

こうした切迫した危険を発見した場合には、穏やかな対話を優先している場合ではありません。

直ちに危険を知らせ、必要に応じて作業を中止させ、安全を確保する必要があります。

そのうえで、なぜ危険な行動が行われたのかを確認し、再発防止を考えます。

危険を見逃さない厳しさと作業者を尊重する態度

この両方が必要です。

人には敬意を払い、危険には厳しく向き合う。

これが安全パトロールを行う人の基本姿勢だと思います。

人には敬意、危険には毅然

指摘した後の対応が信頼関係を決める

安全パトロールで問題点を指摘した後、その結果を確認しているでしょうか。

作業者から改善の要望を受けたのに何の連絡もない。

以前も同じ問題を指摘したのに設備が改善されていない。

こうした状況が続けば、作業者はパトロールに期待しなくなってしまいます。

その場で改善できることはその場で対応する。

すぐに改善できない問題は責任者や対応期限を明確にする。

そして、改善できたことを作業者へ伝える。

対応が難しい場合も、その理由や今後の方針を説明する。

作業者の声を聞くだけで終わらせず改善へつなげることが信頼を生みます。

「言っても無駄だ」ではなく、

「言えば改善につながる」

そう思ってもらえる安全パトロールを目指したいものです。

指摘した後の対応

まとめ 安全パトロールは信頼関係から始まる

安全パトロールの成果は指摘件数だけでは測れません。

作業者が危険を理解したか

問題の背景を把握できたか

改善へつなげられたか

そして、作業者が安全について話しやすくなったか。

こうした点も大切です。

パトロールする人が作業者を尊重し、現場の話を聞き、良い点を評価する。

一方で、危険な行動には毅然と対応する。

その積み重ねが信頼関係を生み、現場の安全活動をより実効性のあるものにしていきます。

安全パトロールは「指摘する活動」から「一緒に改善する活動」へ

パトロールする側の態度が変われば、作業者の受け止め方も変わっていくのではないでしょうか。

まとめ 信頼関係から始まる

安全くんのひとこと

「人を責めずに、危険を見つけよう!」

良いところは褒める。

困っていることには耳を傾ける。

危険なことは、はっきり伝える。

信頼関係、ヨシ!

安全くん

参考資料

厚生労働省『製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針に関するマニュアル』第7章「パトロール(作業場所の巡視)」

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/120424.pdf