発電用ボイラには、さまざまな耐熱鋼が使用されています。
前回の記事では、炭素鋼、Mo鋼、Cr-Mo鋼の違いを説明しました。
その中でも、発電用ボイラの高温耐圧部材として長年使用されてきた代表的な材料が、
2.25Cr-1Mo鋼
です。
2.25Cr-1Mo鋼は、Cr(クロム)を約2.25%、Mo(モリブデン)を約1%含む低合金耐熱鋼です。
この鋼は、高温強度と加工性、溶接性などのバランスに優れ、過熱器管や再熱器管だけでなく、管寄せや蒸気配管などにも広く使用されてきました。
しかし、発電設備の高効率化に伴い、蒸気条件がさらに高温・高圧になると、従来の2.25Cr-1Mo鋼では高温強度が不足する場合が生じます。
そこで、2.25%Crという基本的な合金系を維持しながら、高温強度と溶接性の改善を目指して開発された材料が、
HCM2S(2.25Cr-1.6W系鋼)
です。
今回は、2.25Cr-1Mo鋼が長年使用されてきた理由を整理し、HCM2Sの開発によって何が変わったのかを、合金元素、金属組織、クリープ強度、溶接性の視点から解説します。
2.25Cr-1Mo鋼とは
① 2.25Cr-1Mo鋼の基本
2.25Cr-1Mo鋼は、CrとMoを添加した低合金耐熱鋼です。
発電用ボイラで使用される代表的な材料には、次のようなものがあります。

鋼種名は製品形状や適用規格によって異なりますが、基本となる合金系は2.25Cr-1Moです。
Crは高温酸化特性や炭化物の形成などに関係し、Moは高温強度の改善に寄与します。
両元素を組み合わせることによって、炭素鋼よりも高温で使用しやすい材料になっています。
ただし、2.25Cr-1Mo鋼はステンレス鋼ではありません。
Crを含んでいても、高温の蒸気や燃焼ガス中では酸化スケールが形成されます。
② 2.25Cr-1Mo鋼の主な適用部位
2.25Cr-1Mo鋼は、発電用ボイラのさまざまな場所に使用されてきました。
代表的な適用部位は、
- 過熱器管
- 再熱器管
- 管寄せ
- 高温蒸気配管
などです。
ただし、これらの部位で常に2.25Cr-1Mo鋼が使用されるわけではありません。
材料温度、圧力、許容引張応力、酸化・腐食環境などによって適用できる範囲は変わります。

なぜ2.25Cr-1Mo鋼は長年使われてきたのか
2.25Cr-1Mo鋼が広く使用された理由は、高温強度だけではありません。
高温での使用に必要な材料特性と設備を製造するための施工性を比較的よく両立していたからです。
① 炭素鋼よりも高温強度に優れる
炭素鋼は、比較的温度の低いボイラ部材では合理的な材料です。
しかし、温度が高くなると引張強さや降伏強さが低下し、さらに長時間使用ではクリープ変形が問題になります。
2.25Cr-1Mo鋼では、CrやMoの添加によって、高温での強度特性が改善されています。
そのため、炭素鋼では十分な強度を確保しにくい条件でも、2.25Cr-1Mo鋼を使用できる場合があります。
② 加工性と溶接性を確保できる
発電用ボイラには、非常に多くの溶接部があります。
過熱器管や再熱器管では、管を曲げ加工したり、他の管や管寄せと溶接したりする必要があります。
また、管寄せや主蒸気管などの厚肉部材では製造時の熱処理や溶接施工が重要になります。
2.25Cr-1Mo鋼は、適切な施工管理が必要な低合金耐熱鋼ですが、高温強度に加えて製造・加工・溶接に関する技術が蓄積され、広く使用されてきました。
③ 長年の使用実績と超臨界圧ボイラへの貢献
2.25Cr-1Mo鋼は、発電用ボイラの高温耐圧部材として長年使用されてきました。
特に、管寄せや主蒸気管などの厚肉耐圧部材への適用は、火力発電プラントの高温・高圧化を支えてきました。
藤田利夫氏の「火力発電プラント用耐熱鋼の発展」では、2.25Cr-1Mo鋼の開発が超臨界圧火力発電プラントの実現に貢献したことが紹介されています。
同資料では、1967年に実現した超臨界圧プラントの蒸気条件として、538℃/538℃、24MPaが示されています。
また、材料選定では、材料試験で高い強度が得られれば、それだけで十分というわけではありません。
実際の設備で長時間使用したときに、どのような変形や損傷が生じるかを理解する必要があります。
2.25Cr-1Mo鋼については、長年の使用を通じて、クリープ特性、組織変化、溶接性、損傷事例などに関する知見が蓄積されてきました。
つまり、2.25Cr-1Mo鋼は、優れた高温特性によって発電設備の高温・高圧化を支えるとともに、豊富な使用実績によって設備の設計や保守管理に必要な技術的知見が蓄積されてきた材料なのです。

2.25Cr-1Mo鋼の高温強度を支える金属組織
2.25Cr-1Mo鋼の高温強度は、CrとMoを添加しているという化学成分だけで決まるわけではありません。
化学成分と熱処理によって形成された金属組織が重要になります。
① 金属組織は熱処理条件によって変わる
2.25Cr-1Mo鋼では、製品形状や熱処理条件、冷却速度などによって、フェライト・パーライトやベイナイトなどの組織が形成されます。
したがって、2.25Cr-1Mo鋼には必ず一種類の組織が形成されるというわけではありません。
同じ合金系でも、熱処理によって材料の強度や靭性、クリープ特性が変わる場合があります。
② CrやMoは炭化物の形成にも関係する
CrやMoは、母相に固溶するだけでなく、炭化物の形成にも関係します。
炭化物は、結晶粒内や結晶粒界、ベイナイト組織の内部境界などに存在します。
その種類、大きさ、分布によって高温での転位の移動や組織の安定性が変わり、クリープ強度にも影響します。
ここで重要なのは、炭化物が存在するだけで高温強度が決まるわけではないということです。
炭化物が微細に分散している場合と、長時間使用によって粗大化した場合では、材料の変形に対する抵抗が異なります。
③ 長時間使用すると金属組織は変化する
高温で長時間使用すると、炭化物の析出・成長・粗大化や、母相中の固溶元素量の変化などが進行する場合があります。
その結果、材料のクリープ特性が変化します。
したがって、ボイラ用耐熱鋼では、
製造時の金属組織だけでなく、長時間使用した後の金属組織も重要
なのです。

2.25Cr-1Mo鋼の限界
2.25Cr-1Mo鋼は優れた低合金耐熱鋼ですが、使用温度がさらに高くなると課題が生じます。
① 高温では許容引張応力が低下する
材料の許容引張応力は、一般に温度が高くなるほど低下します。
2.25Cr-1Mo鋼も例外ではありません。
特にクリープが重要になる高温域では、長時間使用時の変形・破断特性が設計を左右します。
例えば、同じ圧力と管径で比較した場合、許容引張応力が低下すれば、必要肉厚は大きくなります。
逆に、高温でも高い許容引張応力を確保できる材料があれば、必要肉厚を小さくできる場合があります。
② 厚肉化は設備設計にも影響する
必要肉厚が大きくなると、管や配管の重量が増加します。
特に管寄せや主蒸気管のような厚肉部材では、起動停止時に生じる内外面温度差と熱応力も重要になります。
そのため、より高い高温強度を持つ材料によって薄肉化できれば、設備重量や熱応力の面で有利になる場合があります。
③ 溶接施工にも配慮が必要
2.25Cr-1Mo鋼では、溶接時の冷却によって熱影響部が硬化し、条件によっては低温割れが問題になります。
そのため、溶接条件に応じた予熱や溶接後熱処理などの管理が重要です。
つまり、2.25Cr-1Mo鋼には、
さらに高温強度を高めたいが溶接施工性も損ないたくない
という技術的な課題があったのです。
この課題に対応するために開発された材料の一つがHCM2Sです。

HCM2S|2.25Cr鋼を高強度化する新しい合金設計
① HCM2Sの開発目的
HCM2Sは、従来の2.25Cr-1Mo鋼を基本としながら高温強度と溶接性の改善を目指して開発された低合金耐熱鋼です。
代表的な規格名は、
火STBA24J1、ASME T23
です。
配管用材料では火STPA24J1やASME P23などの規格名が用いられます。
HCM2Sの特徴は、従来の2.25Cr-1Mo鋼に比べて、Moの大部分をW(タングステン)に置き換え、V(バナジウム)やNb(ニオブ)などを添加していることです。
また、炭素量を低く抑えている点も重要です。
② 2.25Cr-1Mo鋼とHCM2Sの化学成分
両者の代表的な合金設計を比較してみましょう。

※開発論文で示された代表的な合金設計値です。製品規格の成分範囲をそのまま示したものではありません。
ここで注目したいのは、Crの添加量をほぼ維持していることです。
つまり、HCM2SではCrを大幅に増やすのではなく、Mo、W、V、Nbなどの組み合わせと熱処理の最適化によって高温強度を改善しようとしたのです。

なぜMoをWに置き換えたのか
HCM2Sの合金設計で重要なのが、Moの大部分をWに置き換えたことです。
Wは高温での固溶強化に寄与する元素です。
開発研究では、MoとWの添加量が長時間クリープ破断強度に及ぼす影響が検討されました。
その結果、Wを多く添加することで高温クリープ強度を改善できることが示されました。
ただし、Moを完全になくしたわけではありません。
HCM2Sでは、約0.1%のMoが残されています。
開発論文では、この少量のMoも固溶強化に寄与すると考察されています。
つまり、
HCM2SはMoを単にWへ置き換えた材料ではなく、MoとWの組み合わせを最適化した材料
なのです。
さらに、この合金設計にVやNbを組み合わせることが重要になります。

V・Nbによる微細析出強化
HCM2Sの高温強度を理解するうえで、もう一つ重要なのが析出強化です。
① VやNbを添加する目的
VやNbは炭化物形成元素です。
HCM2Sでは、VやNbを添加することによって、微細なMC型炭化物の形成を利用しています。
代表的な析出物として、
- VC
- (V,Nb)C
などが挙げられます。
これらの微細な炭化物は、母相中に分散して析出し、転位の移動を妨げることで強化に寄与します。
② 微細な炭化物が高温強度を支える
クリープ変形では、高温で転位の移動や組織の変化が進行します。
微細な炭化物が分散していると、転位の移動に対する抵抗を高める働きがあります。
そのため、微細な析出物を適切に形成させることがクリープ強度の改善につながります。
ただし、析出物は高温で長時間使用すると変化します。
析出物の粗大化や分布の変化によって強化効果が変わる可能性があります。
そのため、初期状態で微細な析出物が多ければよいというわけではなく、長時間使用時の安定性も重要になります。
③ Wによる固溶強化とV・Nbによる析出強化
ここまで整理すると、HCM2Sの強化機構は次のように考えられます。
Wや少量のMoによる固溶強化
そして、
V・Nb系微細炭化物による析出強化
です。
これらを焼戻しベイナイト組織と組み合わせることで高温強度の向上が図られています。
つまり、HCM2Sの開発では、合金元素の添加量だけではなく、どのような金属組織を形成させるかが重要だったのです。
HCM2Sの金属組織は焼戻しベイナイト
① なぜベイナイト組織なのか
HCM2Sの開発論文では、標準的な熱処理の例として、
焼ならし:1050℃
焼戻し:770℃
が紹介されています。
この熱処理によって、焼戻しベイナイト組織が形成されます。
ベイナイトは、オーステナイトからの変態によって形成される組織の一つです。
HCM2Sでは、このベイナイト組織と微細な炭化物を組み合わせることで、高温強度を確保しています。
② 焼戻しベイナイトと微細炭化物
開発論文では、電子顕微鏡観察によって、微細なVCなどの炭化物がフェライト母相中に分散していることが報告されています。
これらの微細析出物が、高温での変形抵抗を高めることに寄与します。
ここで、従来の2.25Cr-1Mo鋼との違いが見えてきます。
従来鋼ではCr・Moを含む組織によって高温強度を確保していたのに対し、HCM2SではWによる固溶強化と微細炭化物の析出強化を積極的に組み合わせているのです。
これは、低合金耐熱鋼の高強度化における重要な技術的進歩といえます。
HCM2Sの高温強度
HCM2Sの開発論文では、従来の2.25Cr-1Mo鋼に比べて、約1.8倍の高温クリープ強度を持つことが報告されています。
ただし、強度の比較は温度や評価時間によって変わります。
そこで、藤田利夫氏の「火力発電プラント用耐熱鋼の発展」に掲載された、10万時間クリープ破断強度の比較例を見てみましょう。

※2001年の文献に掲載された10万時間クリープ破断強度の評価値です。現在の設計用許容引張応力を示すものではありません。
この比較から、HCM2Sでは高温域でのクリープ破断強度が大きく改善されていることがわかります。
特に600℃では、従来の2.25Cr-1Mo鋼に対して約2.9倍の10万時間クリープ破断強度が示されています。
さらに注目したいのは、HCM2Sが低合金耐熱鋼でありながら、改良9Cr-1Mo鋼に匹敵する高温強度を示したことです。
HCM2Sの開発論文では、改良9Cr-1Mo鋼(火STBA28)とのクリープ破断特性の比較も行われています。
その結果、HCM2Sのクリープ破断強度は、550℃では改良9Cr-1Mo鋼より低いものの、600℃では同程度となり、650℃では上回る傾向が報告されています。
つまり、約2.25%Crという低いCr含有量でありながら、特定の高温条件では約9%Crを含む高強度フェライト系耐熱鋼に匹敵するクリープ破断強度を実現したのです。
これは、Moの大部分をWに置き換え、VやNbによる微細炭化物の析出強化と焼戻しベイナイト組織を組み合わせた合金設計の成果といえます。
ただし、HCM2Sがすべての温度・使用時間において改良9Cr-1Mo鋼と同等以上の強度を持つという意味ではありません。
また、材料の使用可否はクリープ破断強度だけで決まるものではなく、耐水蒸気酸化性や溶接部の健全性なども考慮する必要があります。
ここで重要なのは、
合金元素の添加量を単純に増やすのではなく、合金設計と金属組織の制御によって高温強度を大幅に改善できる
ということです。
なお、10万時間クリープ破断強度は、実際の設計に用いる許容引張応力とは異なります。
ボイラの肉厚計算には、適用する技術基準で規定された温度別許容引張応力を使用する必要があります。

HCM2Sは溶接性も改善
高温強度を改善するだけであれば、合金元素を多く添加する方法も考えられます。
しかし、ボイラ用耐熱鋼では、溶接性を無視することはできません。
HCM2Sの開発では、高温強度と溶接性の両立が重要な課題でした。
① 低炭素化によって溶接割れ感受性を低減する
HCM2Sでは、炭素量が約0.06%に抑えられています。
炭素量を低くすることによって、溶接熱影響部の過度な硬化を抑え、低温割れの感受性を低減することが期待できます。
開発論文では、溶接割れ試験において、従来の2.25Cr-1Mo鋼や改良9Cr-1Mo鋼との比較が行われています。
その結果、HCM2Sでは良好な耐溶接割れ性が確認されました。
② 予熱・溶接後熱処理の省略を目指した
開発時の研究では、HCM2Sは従来のCr-Mo鋼と比べて溶接性が改善され、試験条件によっては予熱や溶接後熱処理を省略できることが報告されています。
ボイラの伝熱管には多数の溶接部があるため、施工工程を合理化できれば、製造コストや施工期間に影響します。
しかしながら、
HCM2Sを使用すれば、あらゆる条件で予熱や溶接後熱処理が不要になるという意味ではありません。
実際には、管厚、拘束条件、溶接方法、溶接材料、適用規格などによって施工条件を検討する必要があります。
また、T23鋼の実機溶接部では、条件によって溶接割れが問題となった事例も報告されています。
材料自体の溶接性が改善されても、溶接施工管理が不要になるわけではありません。
③ 溶接継手の高温強度も重要
溶接部では、母材、溶接金属、溶接熱影響部で金属組織が異なります。
したがって、母材のクリープ強度が高くても、溶接継手として十分な長時間強度を確保できなければ、設備として使用できません。
HCM2Sでは、共金系溶接材料の開発や、溶接継手の機械的性質・クリープ破断特性の確認も行われています。
これは、材料を開発することと、その材料を設備として使えるようにすることは別の技術課題であることを示しています。

2.25Cr-1Mo鋼とHCM2Sを比較する
ここまでの内容を整理しましょう。
| 比較項目 | 2.25Cr-1Mo鋼 | HCM2S |
|---|---|---|
| 代表鋼種 | STBA24、T22 | 火STBA24J1、T23 |
| 基本合金系 | 2.25Cr-1Mo | 2.25Cr-1.6W-V-Nb系 |
| 炭素量 | 従来の低合金耐熱鋼の水準 | 低炭素化 |
| 高温強度 | 長年の使用実績がある | 従来鋼より高いクリープ強度 |
| 主な強化機構 | Cr・Moの固溶、炭化物や組織による強化 | Wなどの固溶強化+微細MC型析出物 |
| 金属組織 | 熱処理に応じてフェライト・パーライト、ベイナイトなど | 焼戻しベイナイト |
| 溶接性 | 予熱・溶接後熱処理などの管理が重要 | 低炭素化によって溶接性を改善 |
| 代表的な特徴 | 長年の実績と材料・施工技術の蓄積 | 高温強度と施工性の両立を目指した改良鋼 |
ここで重要なのは、HCM2Sが2.25Cr-1Mo鋼を単純に置き換えるためだけの材料ではないということです。
従来鋼で必要な高温強度を確保できる場合には、使用実績や経済性などから2.25Cr-1Mo鋼を選択することにも合理性があります。
一方、より高い高温強度が必要な場合にはHCM2Sなどの高強度耐熱鋼が候補になります。
ただし、どの材料を選択する場合でも、強度、使用温度、腐食環境、施工性、適用規格などを総合的に検討する必要があります。

2.25Cr-1Mo鋼とHCM2S まとめ
2.25Cr-1Mo鋼は、発電用ボイラの高温耐圧部材として、長年使用されてきた代表的な低合金耐熱鋼です。
その理由は、高温強度に優れているだけではありません。
加工性、溶接性、長年の使用実績など、設備材料として必要な特性のバランスに優れていたからです。
しかし、発電設備の高効率化に伴って蒸気条件が高温・高圧になると、従来鋼より高い高温強度が求められるようになりました。
そこで、2.25Cr鋼を基本として開発されたのがHCM2Sです。
HCM2Sでは、Moの大部分をWに置き換え、VやNbなどを添加するとともに、炭素量を低く抑えています。
さらに、焼戻しベイナイト組織と微細炭化物を利用することで、高温強度の向上が図られました。
また、溶接性や曲げ加工性も検討され、実際の発電用ボイラでの使用試験も行われています。
つまり、
2.25Cr-1Mo鋼からHCM2Sへの進化とは、合金元素と金属組織を制御し、高温強度だけでなく設備材料としての施工性も改善しようとした技術的発展
なのです。
ここで忘れてはいけないのは、新しい材料が開発されたからといって、従来材料の価値がなくなるわけではないということです。
発電用ボイラでは、部位ごとに温度や圧力、使用環境が異なります。
また、必要な強度や施工条件、経済性も異なります。
したがって、材料を選定する際には、
「なぜ、その合金元素が添加されているのか」
「どのような金属組織によって高温強度を確保しているのか」
「従来鋼の何を改善した材料なのか」
を理解することが重要です。
そして、材料の長期信頼性を評価するためには、初期強度だけでなく、長時間使用に伴う組織変化や溶接部の健全性まで考える必要があります。
材料の進歩を理解すると、ボイラの設計だけでなく、設備の寿命や保全の考え方まで見えてきます。

参考文献
- 椹木義淳ほか「ボイラ用高強度2Cr鋼(HCM2S)の開発」『住友金属』Vol.49、No.1、1997年
- 増山不二光ほか「ボイラ用高強度2.25Cr-1.6W系鋼管(HCM2S)の開発」『火力原子力発電』Vol.47、No.2、1996年
- 藤田利夫「火力発電プラント用耐熱鋼の発展」『まてりあ』Vol.40、No.11、2001年
※本文中の開発試験結果や強度比較は、各文献に報告された当時の結果です。実際の材料選定、許容引張応力の確認、溶接施工には、対象設備に適用される規格・技術基準を確認する必要があります。
くろがねくんの一言
「Crを増やすだけが進化じゃない!合金元素と金属組織の工夫で、高温強度は変わるんだ!」

<執筆者情報>
難波一夫
IHI/石川島播磨重工業 出身 の重工系技術士(金属部門)
中小企業診断士・労働安全コンサルタント・エネルギー管理士資格を保有
材料から設備を診る! 技術経営コンサルタント






