【重工系労働安全アーカイブ#21】リスク低減措置の優先順位|「注意する」より作業そのものを変える

リスク低減措置の優先順位アイキャッチ Industrial safety

リスクアセスメントでは、

危険源を見つける
↓
リスクを評価する
↓
対策を考える

という流れで進みます。

しかし、ここで一つ注意したいことがあります。

それは、

対策なら何でもよいわけではない

ということです。

たとえば、

「十分注意する」

「作業前KYを徹底する」

「経験者に作業させる」

「保護具を着用する」

といった対策は、もちろん必要です。

しかし、これらは基本的に、

人が正しく行動することを前提とした対策

です。

非定常作業では、

設備状態が変わる
作業者が慣れていない
突発対応がある
時間的な圧力がかかる

といった条件が重なります。

そのため、

人の注意力だけに頼る対策では限界があります。

だからこそ、リスク低減措置には、

優先順位

があります。

リスク低減措置には順番がある

基本的には、

本質的対策
↓
工学的対策
↓
管理的対策
↓
保護具

という順番で考えます。

つまり、

危険な作業そのものをなくせないか
↓
設備で危険を防げないか
↓
手順やルールで管理できないか
↓
最後に保護具で守れないか

という考え方です。

重要なのは、

最初から「気をつける」「保護具をつける」に行かないこと

です。

リスク低減対策の順序

本質的対策とは

本質的対策とは、

危険源そのものをなくす、あるいは危険な作業そのものをなくす

ことです。

たとえば、

人が設備内部に入って点検していた
↓
外部から確認できる構造に変更する

詰まりを人が手で除去していた
↓
詰まりにくい構造へ変更する

重量物を人力で持ち上げていた
↓
そもそも重量物を分解して軽量化する

高所に上がって点検していた
↓
地上から点検できる位置へ機器を移設する

といったものです。

これは、

危険な行為を安全にする

のではなく、

危険な行為そのものを不要にする

という考え方です。

リスク低減措置の中では、最も優先すべき対策です。

本質的対策

「作業者を守る」より「危険な作業をなくす」

たとえば、

回転体の近くで清掃する作業

があるとします。

ここで、

「巻き込まれに注意する」

という対策を考えるより、

清掃のために回転体へ近づく必要がない構造にできないか

を考える方が、より本質的です。

非定常作業では特に、

なぜ人が危険源へ近づかなければならないのか

を考えることが重要です。

点検のため。

詰まり除去のため。

清掃のため。

調整のため。

この「ために」を見直すことで、本質的な改善につながることがあります。

危険な作業をなくす

工学的対策とは

本質的に危険をなくせない場合は、

次に、

設備や機械の仕組みで人を守る

ことを考えます。

これが工学的対策です。

たとえば、

インターロックを設ける

カバーを開けると設備が停止する

非常停止装置を設ける

ガードや防護柵を設置する

局所排気設備を設ける

遠隔操作化する

センサーで危険区域への侵入を検知する

などです。

ここでもポイントは、

人が注意しなくても、設備側で危険を防ぐ

ことです。

工学的対策

非定常作業では工学的対策が効きやすい

非定常作業では、

「通常運転時は安全だが、点検時に危険になる」

という設備が少なくありません。

たとえば、

通常運転時
↓
カバーで回転体が覆われている

点検時
↓
カバーを外す
↓
人が危険部へ近づく

という場合です。

このとき、

カバーを開けたら自動的に停止する

開放中は再起動できない

点検位置まで離れなければ起動できない

といった仕組みにすれば、

非定常作業時のリスクを大きく下げられます。

非定常作業の工学的対策

管理的対策とは

次に考えるのが、

手順・ルール・教育・管理によってリスクを下げる

管理的対策です。

たとえば、

作業手順書を作る

作業許可制度を設ける

KYを行う

作業責任者を決める

複数人作業にする

立入禁止区域を設定する

作業前後に連絡する

教育を実施する

といったものです。

しかし、

人がルールを守ることを前提としている

という弱点があります。

管理的対策

管理的対策だけでは不十分なことがある

たとえば、

「設備内部へ入る前に必ず電源を切る」

というルールを作ったとします。

これは必要です。

しかし、

電源を切り忘れたら?

別の人が入れたら?

停止ボタンを押しただけで主電源が生きていたら?

という問題が残ります。

そのため、

「電源を切る」という管理的対策だけでなく、

ロックアウトできる構造にする

という工学的・設備的な対策まで持っていくことが重要です。

じゃbb利的対策だけでは不十分

保護具は最後の防御

最後に、

保護具

があります。

ヘルメット

保護メガネ

安全帯

耐熱手袋

防じんマスク

安全靴

などです。

保護具は重要です。

しかし、

危険源をなくしているわけではありません。

危険が発生したあと、

人体への影響を小さくするための最後の防御

です。

だからこそ、

保護具だけで対策を終わらせない

ことが重要です。

保護具は最後の防御

「注意する」は対策の中で弱い

現場では、

「十分注意する」

という言葉をよく使います。

しかし、

注意力は一定ではありません。

疲労している。

焦っている。

慣れている。

初めて作業する。

時間に追われている。

こうした状況では、注意力は変化します。

非定常作業では特に、

人の注意力が低下しやすい条件がそろっています。

だからこそ、

「注意する」より先に、

作業をなくす
設備で止める
物理的に隔離する
近づけなくする

という対策を考える必要があります。

注意するは弱い

非定常作業こそ「作業そのもの」を見直す

非定常作業では、

点検

清掃

詰まり除去

調整

補修

試運転

といった作業が発生します。

これらは、

通常運転では人が近づかない場所に近づく作業

になりやすいものです。

だからこそ、

「安全に実施するにはどうするか」

だけでなく、

そもそも、その作業を人がやらなければならないのか

を考えることが重要です。

たとえば、

目視点検
↓
カメラ監視へ

手作業で清掃
↓
自動洗浄へ

詰まり除去
↓
詰まりにくい構造へ

高所点検
↓
地上から確認可能に

という改善です。

非定常作業の安全対策では、

作業方法の改善だけでなく、設備設計の改善まで踏み込む

ことが重要です。

設備改善まで踏み込む

「現場で注意」から「設備で防ぐ」へ

リスクアセスメントの対策を考えるとき、

次のような変化を目指したいところです。

注意する
↓
手順を決める
↓
物理的に隔離する
↓
インターロックで止める
↓
危険な作業そのものをなくす

下へ行くほど、

人の判断や注意力への依存が小さくなります。

つまり、

安全を人に背負わせるのではなく、設備や仕組みに持たせる

方向です。

作業そのものを見直す

対策を考えるときの問い

リスクアセスメントで対策を考えるときは、

次のように問いかけると整理しやすくなります。

順位問い
本質的対策この危険源・作業そのものをなくせないか
工学的対策設備や仕組みで人を危険から隔離できないか
管理的対策手順・許可・教育・連絡でリスクを下げられないか
保護具それでも残るリスクから身体を守れるか

この順番で考えるだけでも、

「注意する」

だけで終わる対策から一歩進めます。

対策を考えるときの問い

すべてを一度に変えられなくてもよい

現実には、

すぐに設備改造できない

予算がない

停止期間が取れない

ということもあります。

その場合でも、

まず管理的対策でリスクを下げながら、

次の定期修理で設備改造する

次年度予算でインターロックを追加する

設備更新時に危険作業そのものをなくす

という段階的な改善ができます。

大切なのは、

管理的対策で終わらせず、次の改善へつなげること

です。

すべてを一度に替えられなくてもいい

リスク低減措置の優先順位 まとめ

リスクアセスメントでは、

危険源を見つけるだけでは十分ではありません。

重要なのは、

どのような対策を選ぶか

です。

対策には、

本質的対策
↓
工学的対策
↓
管理的対策
↓
保護具

という優先順位があります。

「注意する」

「手順を守る」

「保護具を使う」

ことも必要です。

しかし、それだけでは、

人の注意力や判断に安全を委ねることになります。

だからこそ、

危険な作業そのものをなくせないか。
人が危険源へ近づかなくてよいようにできないか。
設備側で止められないか。
物理的に隔離できないか。

という順番で考えることが重要です。

特に非定常作業では、

人が普段近づかない危険源へ近づくことがあります。

だからこそ、

「作業者に注意させる」のではなく、「危険な作業をしなくてよい設備・仕組みに変える」

ことが、本質的な改善になります。

リスクアセスメントの目的は、

危険を見つけて終わることではありません。

現場の作業と設備を、より安全な形へ変えていくこと

なのです。

リスク低減まとめ

安全くんの一言

「“気をつけよう”で終わらせない!危険な作業そのものをなくす、設備で防ぐ――上位の対策から考えよう。」

安全くん

<執筆者情報>
難波一夫
IHI/石川島播磨重工業出身の重工系技術士(金属部門)
中小企業診断士・労働安全コンサルタント・エネルギー管理士資格を保有
材料から設備を診る! 技術経営コンサルタント

やくも技術士事務所|重工系技術士(金属部門)・労働安全コンサルタント・中小企業診断士 難波 一夫|材料から設備を診る 損傷解析から設備マネジメント・労働安全・経営まで総合支援
中小企業診断士・労働安全コンサルタントの資格を持つ重工系技術士(金属部門)が、発電設備の損傷解析、材料劣化評価、保全最適化、安全対策を総合的に支援。実務経験に基づく技術コンサルティングを提供します。
重工系技術士|材料・設備・安全・経営をつなぐ技術コンサルティング|やくも技術士事務所
中小企業診断士・労働安全コンサルタントの資格を持つ重工系技術士(金属部門)が、発電設備の損傷解析、材料劣化評価、保全最適化、安全対策を総合的に支援。実務経験に基づく技術コンサルティングを提供します。