【重工系労働安全アーカイブ#18】計画的な非定常作業と突発的な非定常作業|何が違うのか

非定常作業の安全対策アイキャッチ Industrial safety

前回の記事では、

非定常作業とは、通常の設備状態から外れて行われる作業

と整理しました。

【重工系労働安全アーカイブ#17】非定常作業とは|なぜ「いつもと違う作業」で災害が起きやすいのか
工場やプラントの安全を考えるとき、どうしても目が向きやすいのが、普段行っている作業です。たとえば、 機械を運転する 原料を投入する 製品を取り出す 設備を監視するといった毎日の作業です。こうした繰り返し行われる作業は、一般に定常作業と呼ばれ...

たとえば、

保全
点検
清掃
調整
段取り替え
補修・修理
異常処置
設備停止
設備立上げ
試運転
休止後の再稼働

などです。

ただし、これらの非定常作業は、すべて同じ性質を持っているわけではありません。

大きく分けると、

あらかじめ予定して実施する非定常作業

と、

設備トラブルなどによって突然発生する非定常作業

があります。

つまり、

計画的な非定常作業

と

突発的な非定常作業

です。

この二つは、どちらも「いつもと違う作業」ですが、作業前に準備できる時間や、現場で求められる判断が大きく異なります。

計画的な非定常作業とは

計画的な非定常作業とは、

実施する時期や内容を、ある程度あらかじめ把握できる非定常作業

です。

代表的なのが、

  • 定期修理
  • 定期点検
  • 法定点検
  • 設備の清掃
  • 部品交換
  • 設備改造
  • 定期的な段取り替え
  • 計画停止
  • 停止後の立上げ
  • 試運転

などです。

これらは通常運転ではありませんが、

いつ、何をするのかを事前に考えることができます。

たとえば定期修理であれば、

停止日を決める
↓
作業範囲を決める
↓
作業手順を作成する
↓
必要な人員を決める
↓
工具・治具を準備する
↓
危険源を洗い出す
↓
隔離方法を決める
↓
作業を実施する

というように、事前準備が可能です。

計画的な非定常作業

計画できるから安全とは限らない

ここで注意したいのは、

計画的な非定常作業だから安全なのではない

という点です。

むしろ、大規模な定期修理では、

機械作業
電気作業
配管作業
溶接作業
足場作業
クレーン作業

などが同時に行われることがあります。

通常運転時よりも、

人の数も、作業の種類も、設備状態の変化も増える

ことがあります。

つまり、

準備できる非定常作業は、準備して初めてリスクを下げられる

のです。

計画できるから安全とは限らない

計画的な非定常作業で重要なのは「事前準備」

計画的な非定常作業では、

実際の作業が始まる前にどれだけ危険を想定できるか

が重要です。

確認すべきものとしては、

作業範囲
↓
設備状態
↓
残留エネルギー
↓
停止・隔離方法
↓
作業手順
↓
必要な保護具
↓
他作業との干渉
↓
復旧手順

などがあります。

つまり、

「当日、現場で考える」ことを減らす

のが計画的非定常作業の安全の基本です。

事前準備

突発的な非定常作業とは

一方、突発的な非定常作業とは、

設備異常やトラブルなどにより、その場で対応が必要になる非定常作業

です。

たとえば、

  • 設備の突然停止
  • 材料の詰まり
  • 製品の引っ掛かり
  • 異音
  • 振動異常
  • 漏えい
  • センサー異常
  • モーター停止
  • 制御異常
  • 配管トラブル

などがあります。

現場では、

正常運転
↓
異常発生
↓
設備停止
↓
原因確認
↓
対応判断
↓
復旧作業

という流れになります。

計画的な非定常作業との大きな違いは、

十分な準備時間がないまま、判断を求められること

です。

突発的な非定常作業

突発的な非定常作業では「まず見に行く」が起こりやすい

設備が突然止まると、

作業者はまず、

「何が起きたのだろう」

と考えます。

そして、

設備に近づく
↓
内部を見る
↓
詰まりを確認する
↓
手を入れる
↓
原因を取り除く

という行動につながることがあります。

ここで危険なのは、

安全確認より原因確認が先になりやすい

ことです。

特に、

「少し見れば分かる」

「すぐ直せそう」

「いつもの詰まりだろう」

という判断が入ると、

停止
隔離
残留エネルギー確認

といった安全手順が省略される可能性があります。

まず見に行くはだめ

「早く復旧させたい」が判断を変える

突発的な非定常作業には、

もう一つ大きな特徴があります。

それが、

復旧を急ぐ心理

です。

生産設備であれば、

「ラインを止めたくない」

プラントであれば、

「早く運転状態へ戻したい」

という心理が働きます。

その結果、

本来であれば、

確認
↓
停止
↓
隔離
↓
残留エネルギー確認
↓
作業

と進むべきところを、

異常発生
↓
すぐ設備へ近づく
↓
原因を見る
↓
そのまま処置する

という流れになってしまうことがあります。

突発的な非定常作業では、

時間的な圧力そのものがリスク要因になる

のです。

早く復旧させたい

計画的と突発的では「危険の生まれ方」が違う

二つを整理すると、次のようになります。

比較表

計画的な非定常作業の代表的なリスク

計画的な非定常作業では、

準備できるはずなのに、準備が不十分だった

という形で事故につながることがあります。

たとえば、

隔離範囲が不十分だった
↓
別系統から圧力がかかった

作業範囲が共有されていなかった
↓
別の班が設備を操作した

復旧確認が不十分だった
↓
工具や仮設物を残したまま立ち上げた

といったケースです。

つまり、

計画的非定常作業では、「準備したつもり」が危険

になります。

計画的な非定常作業

突発的な非定常作業の代表的なリスク

一方、突発的な非定常作業では、

その場での判断

が大きなリスクになります。

たとえば、

「止まっているから大丈夫」

「すぐ取れる」

「前も同じだった」

「少し手を入れるだけ」

という判断です。

ところが、

止まっていても残留エネルギーが残っているかもしれません。

自動復帰する設備かもしれません。

別の作業者が再起動するかもしれません。

詰まりが取れた瞬間に動き出すかもしれません。

つまり、

突発的な非定常作業では、経験や感覚だけで判断しない仕組み

が必要です。

突発的な非定常作業のリスク

突発作業も「完全に予測不能」ではない

ここで重要なポイントがあります。

突発的な非定常作業は、

いつ起きるか

は予測できないかもしれません。

しかし、

何が起きる可能性があるか

は、ある程度予測できます。

たとえば、

搬送設備なら詰まり

回転機なら振動や異音

配管なら漏えい

センサーなら誤作動

制御設備ならトリップ

などです。

つまり、

発生時刻は予測できなくても、発生パターンは想定できる

のです。

リスクは予測不能ではない

「突発作業を計画しておく」という考え方

一見すると矛盾しているようですが、

突発的な非定常作業ほど、事前に対応方法を決めておく

ことが重要です。

たとえば、

詰まりが発生したらどうするか
↓
誰に連絡するか
↓
どこまで停止するか
↓
どこを隔離するか
↓
誰が作業してよいか
↓
再起動前に何を確認するか

をあらかじめ決めておきます。

すると、

その場で考えることを減らす

ことができます。

つまり、

突発的な非定常作業を安全にするには、「突発時の標準」を準備しておく

ことが有効です。

突発作業を計画しておく

非定常作業では「作業」より「状態変化」を見る

非定常作業を安全に考えるときには、

何をするか

だけではなく、

設備がどの状態にあるのか

を見ることが重要です。

たとえば、

運転中
↓
停止中
↓
隔離中
↓
点検中
↓
復旧中
↓
試運転中
↓
通常運転

というように設備状態は変化します。

そして、

状態が変わるたびに、危険源も変化する

可能性があります。

そのため、

計画的であっても突発的であっても、

「今、この設備はどの状態なのか」

を関係者で共有することが重要になります。

状態変化を見る

計画的な非定常作業と突発的な非定常作業 まとめ

非定常作業には、

計画的な非定常作業

と

突発的な非定常作業

があります。

計画的な非定常作業は、

定期修理
↓
点検
↓
設備改造
↓
計画停止
↓
立上げ
↓
試運転

など、

事前に準備できる非定常作業

です。

一方、

突発的な非定常作業は、

設備停止
↓
詰まり
↓
異音
↓
漏えい
↓
センサー異常
↓
設備トラブル

など、

突然発生し、その場で対応を求められる非定常作業

です。

両者の違いは、

単に

「予定されているか、いないか」

だけではありません。

計画的な非定常作業では、

事前準備の不足

が大きなリスクになります。

突発的な非定常作業では、

焦り・思い込み・その場の判断

が大きなリスクになります。

だからこそ、

計画できる作業は徹底して事前準備する。

そして、

突発的に起こる作業ほど、起きたときの対応を事前に決めておく。

この二つが、非定常作業の安全を考えるうえで重要です。

非定常作業の安全対策

安全くんの一言

「計画できる作業はしっかり準備、突発作業は“起きたときどうするか”を先に決めておこう!」

安全くん

<執筆者情報>
難波一夫
IHI/石川島播磨重工業出身の重工系技術士(金属部門)
中小企業診断士・労働安全コンサルタント・エネルギー管理士資格を保有
材料から設備を診る! 技術経営コンサルタント

やくも技術士事務所|重工系技術士(金属部門)・労働安全コンサルタント・中小企業診断士 難波 一夫|材料から設備を診る 損傷解析から設備マネジメント・労働安全・経営まで総合支援
中小企業診断士・労働安全コンサルタントの資格を持つ重工系技術士(金属部門)が、発電設備の損傷解析、材料劣化評価、保全最適化、安全対策を総合的に支援。実務経験に基づく技術コンサルティングを提供します。
重工系技術士|材料・設備・安全・経営をつなぐ技術コンサルティング|やくも技術士事務所
中小企業診断士・労働安全コンサルタントの資格を持つ重工系技術士(金属部門)が、発電設備の損傷解析、材料劣化評価、保全最適化、安全対策を総合的に支援。実務経験に基づく技術コンサルティングを提供します。