工場の安全パトロールでは整理整頓の状況を確認することがあります。
通路に物が置かれていないか
工具や資材が決められた場所に保管されているか
床面に油や水がこぼれていないか
こうした確認は基本的な安全管理の一つです。
しかし、5S活動の目的は単に職場をきれいにすることなのでしょうか。
例えば、工場の通路に資材が放置されていたとします。
「資材を片付けてください」
と指摘すれば、その場はきれいになるかもしれません。
しかし、なぜ通路に資材が置かれていたのでしょうか。
資材置場が足りないのかもしれません
作業場所から保管場所まで遠すぎるのかもしれません
あるいは、仮置き場所が決まっていないのかもしれません
こうした問題を解決しなければ、同じ状態が繰り返される可能性があります。
また、整理整頓された職場であっても、危険な設備や作業方法が残っている場合があります。
5S活動の安全パトロールでは、職場がきれいかどうかだけでなく、危険が取り除かれ、安全な状態を維持できる仕組みになっているかを確認することが大切です。
今回は、5S活動を通じて現場の安全管理の実態を確認するポイントを考えてみます。
5S活動とは何か 安全管理との関係を考えよう
5S活動とは、整理・整頓・清掃・清潔・躾(しつけ)の5つを基本とする職場改善活動です。
それぞれの頭文字が「S」であることから、5S活動と呼ばれています。

5S活動は生産性や品質の向上を目的として取り組まれることもあります。
しかし、労働安全の面から見ても重要な活動です。
例えば、通路に放置された資材を整理すれば、つまずきによる転倒の危険を減らせます。
工具の置き場所を決めれば、工具を探したり、無理な姿勢で取り出したりする作業を減らせるかもしれません。
また、設備の清掃によって油漏れなどの異常に気づくこともあります。
このように、5S活動は単に見た目を整える活動ではありません。
職場の危険を減らし、安全な作業を行いやすい環境をつくる活動でもあるのです。

整理 不要なものが危険を生んでいないか
整理とは、必要なものと不要なものを区分し、不要なものを取り除くことです。
安全パトロールでは、まず職場に不要なものが放置されていないかを確認します。
例えば、
- 使用しなくなった工具や治具が作業場所に残されている
- 不要な資材や部品が通路に置かれている
- 使用予定のないパレットが積み重ねられている
- 廃材や切りくずが作業場所の周囲に放置されている
- 使用できない機器が使用可能な機器と混在している
といった状態です。
不要物が増えると、通路が狭くなり、歩行時の転倒や設備との接触などの危険が生じます。
また、必要なものを探しにくくなることもあります。
安全パトロールでは、
「この資材は、いつ使用するものですか?」
「ここに保管する必要がありますか?」
「使用しないものを撤去する仕組みはありますか?」
と尋ねてみるのもよいでしょう。
ただし、安全管理に必要な設備や予備品まで不要物と判断して撤去してはいけません。
大切なのは、必要性を確認したうえで適切に管理することです。
整理とは単に物を減らすことではなく、必要なものを安全に管理できる状態にすることなのです。

整頓 必要なものを安全に使える状態か
整頓とは、必要なものを決められた場所に、使いやすい状態で配置することです。
安全パトロールでは、工具や資材の置き場所が決められているかを確認します。
例えば、
工具が決められた棚に保管されている
資材の種類ごとに保管場所が区分されている
重量物が安定した状態で保管されている
必要なものを無理な姿勢にならず取り出せる
こうした状態であれば作業を安全に行いやすくなります。
一方で、整頓されているように見えても、危険な場合があります。
例えば、重量のある工具を高い棚に保管していたとします。
置き場所が決まっていても、取り出す際に無理な姿勢になったり、工具を落下させたりするおそれがあります。
また、資材が整然と積み重ねられていても、積載高さや支持方法が不適切であれば荷崩れの危険があります。
安全パトロールでは、
- 工具や資材の定位置が決められているか
- 重量物を安全に取り扱える配置になっているか
- 荷崩れや落下のおそれはないか
- 通路や作業スペースを妨げていないか
- 必要なものを無理なく取り出せるか
を確認します。
整頓は「きれいに並べること」ではなく「安全に取り扱えるように配置すること」が重要なのです。

清掃 汚れの原因や設備の異常を見逃していないか
清掃は、5S活動の中でも設備の異常発見につながる重要な活動です。
例えば、機械設備の周辺に油がこぼれていたとします。
床面の油を拭き取れば、滑りによる転倒の危険を減らせます。
しかし、油がどこから漏れているのかを確認しなければ再び同じ状態になるかもしれません。
配管の継手から漏れているのか
軸受やシール部から漏れているのか
給油作業の際にこぼれたのか
原因によって必要な対策は異なります。
また、清掃によって、
- 設備の油漏れや水漏れ
- 配管や機器の腐食
- ボルトの緩みや部品の損傷
- 粉じんや切りくずの異常な堆積
- 床面の損傷や排水不良
などに気づくこともあります。
安全パトロールでは、清掃状態を見るだけでなく、汚れが発生する原因にも目を向けたいものです。
ただし、清掃のために運転中の機械へ手を近づけたり、危険な可動部分へ接近したりしてはいけません。
機械の清掃や点検では、必要な停止措置や動力遮断など安全な作業方法を守る必要があります。
清掃は汚れを取り除くだけでなく、設備や作業環境の異常を発見する機会でもあるのです。

清潔 安全な状態が継続して維持されているか
清潔とは、整理・整頓・清掃によって整えた状態を維持することです。
安全パトロールの直前だけ職場をきれいにしても、日常の作業で元に戻ってしまえば十分とはいえません。
例えば、月に一度の大掃除では職場がきれいになっても数日後には通路に資材が置かれているとします。
このような場合、5S活動が日常業務に定着しているとは言い難いでしょう。
安全パトロールでは、
「誰が、いつ、どのように清掃することになっていますか?」
「作業終了後に元の状態へ戻せていますか?」
「整理整頓の状態を維持するための工夫はありますか?」
といった点を確認します。
例えば、工具の定位置を表示する
資材置場の範囲を明確にする
清掃や片付けの時間を作業計画に組み込む
設備の異常を発見した場合の連絡方法を決める
こうした仕組みがあれば、5S活動を維持しやすくなります。
また、清潔な状態を保つためには、必要な保管スペースや清掃用具などが確保されていることも重要です。
清潔とは一時的にきれいにすることではなく、安全な状態を維持できる仕組みをつくることなのです。

躾 安全のルールが日常の行動になっているか
5S活動の最後は「躾」です。
躾とは、決められたことを守る習慣を身につけることです。
ただし、安全パトロールでは、作業者にルールを押し付けたり、守らなかった人を責めたりすることが目的ではありません。
重要なのは、安全な行動を無理なく継続できる職場になっているかという点です。
例えば、使用した工具を元の場所へ戻すルールがあったとします。
しかし、作業場所から工具棚までの距離が遠く、作業のたびに長い距離を移動しなければならないとします。
このような場合、ルールを守らせるだけでなく、工具の配置を見直すことも必要かもしれません。
また、管理監督者自身がルールを守っているかという点も重要です。
作業者には整理整頓を求めているのに、管理者が持ち込んだ資材は通路に放置されている。
これでは安全活動に対する信頼を得にくくなります。
安全パトロールでは、
- 決められたルールが理解されているか。
- 実際の作業で無理なく守れるルールになっているか。
- 管理監督者も率先して実行しているか。
- 作業者が改善提案を出せる環境になっているか。
- 良い取り組みが継続されているか。
を確認しましょう。
躾とは叱って守らせることではなく、安全な行動が自然に実行される職場をつくることだと考えます。

通路や作業スペースから現場の危険を見抜こう
5S活動の安全パトロールでは、特に通路や作業スペースに注目したいものです。
工場では、人、資材、フォークリフト、台車などが同じ空間を利用することがあります。
通路に物が置かれると、歩行者が本来の通路からはみ出し、車両の走行経路に入ってしまう場合があります。
また、非常口や避難経路に物が置かれていれば、緊急時の避難に支障をきたすおそれがあります。
安全パトロールでは、
- 歩行通路に資材や工具が放置されていないか
- 通路の幅が確保されているか
- 非常口や避難経路が塞がれていないか
- 床面に油、水、粉じんなどが堆積していないか
- ケーブルやホースなどが通行の妨げになっていないか
- 作業場所に必要なスペースが確保されているか
を確認します。
特に、設備の点検や補修などの非定常作業では一時的に工具や資材が増えることがあります。
通常時には整理整頓されていても補修工事が始まると通路が狭くなる場合があります。
このような変化にも注意する必要があります。
5S活動の安全パトロールでは、通常時だけでなく、作業内容が変わったときにも安全な状態を維持できるかを確認しましょう。

5S活動が乱れる背景を考えよう
安全パトロールで5S活動の不備を発見した場合、単に片付けを指示するだけでよいのでしょうか。
例えば、工具が作業台の上に散乱していたとします。
「工具を片付けてください」
と指摘すれば、その場では改善するかもしれません。
しかし、繰り返し同じ状態になるなら、その原因を考える必要があります。
工具の保管場所が不足している
必要な工具が多く、作業台に置かざるを得ない
複数の作業者が共用していて、保管ルールが曖昧である
作業終了後に片付ける時間が確保されていない
こうした背景があるかもしれません。
また、設備周辺の油汚れが繰り返し発生している場合には、清掃だけでなく設備の補修が必要かもしれません。
安全パトロールでは、
「なぜ、この状態になっているのでしょうか?」
「作業を進めるうえで、困っていることはありませんか?」
「どうすれば安全な状態を維持できそうですか?」
と作業者に尋ねてみます。
5S活動の不備を作業者の意識だけの問題として捉えないことが重要です。
5S活動が定着しない背景には、設備、作業方法、保管場所、作業時間などの問題が隠れていることもあるのです。

5S活動から現場の安全意識をどう見抜くか
整理整頓された職場を見ると、安全意識が高い職場だと感じることがあります。
確かに、5S活動が適切に実施されていることは職場の安全管理を考えるうえで参考になります。
しかし、整理整頓が行き届いていることだけで、その職場の安全意識を判断できるわけではありません。
例えば、工具棚がきれいに整理されていても、危険な作業方法が日常的に行われているかもしれません。
逆に、補修作業中で一時的に工具や資材が増えていても、仮置き場所や立入禁止区域が適切に管理されている場合もあります。
安全パトロールでは、見た目だけでなく、次のような点にも注目しましょう。
① 作業者が危険を認識しているか
なぜ通路に資材を置いてはいけないのか
なぜ油汚れを放置してはいけないのか
その理由を理解しているかを確認します。
② 自分たちで異常を発見し、対応できているか
設備の油漏れや工具の破損などに気づいたとき、適切に報告し、必要な措置につなげているかを確認します。
③ 改善した状態が維持されているか
指摘されたときだけ片付けるのではなく、日常的に安全な状態を保てているかを確認します。
④ 作業者の改善提案が活かされているか
作業者の工夫によって工具配置や作業方法が改善されているなら、それは評価すべき取り組みです。
安全意識を見抜くためには、職場がきれいかどうかだけでなく、安全を維持する行動や仕組みが日常的に機能しているかを見ることが大切なのです。

5S活動の安全パトロール 何を見るか
ここまでの確認事項を整理します。

これらは基本的な確認項目です。
実際の安全パトロールでは、工場の設備や作業内容によって確認事項を追加する必要があります。
また、5S活動だけですべての危険を把握できるわけではありません。
機械の巻き込まれ、クレーンの吊り荷、化学物質へのばく露、高所からの墜落などは、それぞれの危険に応じたリスクアセスメントや安全対策が必要です。
5S活動は安全管理の基盤ですが、それだけで安全が確保されるわけではないことも理解しておきましょう。

指摘するだけでなく5Sが続く仕組みをつくろう
安全パトロールで5S活動の不備を発見すると、
「通路の資材を片付けてください」
「工具を元の場所に戻してください」
「油汚れを清掃してください」
と指摘することがあります。
もちろん、危険を取り除くために必要な指摘です。
しかし、指摘するだけでは同じ問題が繰り返されるかもしれません。
例えば、資材が通路に放置されていたなら、保管場所や仮置き場所を見直す。
工具が散乱していたなら、工具の定位置や保管方法を改善する。
設備周辺に油が漏れていたなら、設備の異常を調査し、必要な補修につなげる。
清掃が十分に行われていないなら、作業時間や清掃用具の配置を見直す。
このように、5S活動の不備をきっかけに、作業環境や管理方法そのものを改善することが大切です。
また、安全パトロールでは、良い取り組みを見つけて評価することも重要です。
作業者が工夫して工具の保管方法を改善している。
設備の油漏れを早期に発見し、補修につなげている。
作業終了後に安全な状態へ戻す仕組みが定着している。
こうした活動は、他の職場にも展開できるかもしれません。
5S活動の安全パトロールは、整理整頓の不備を指摘するだけでなく、安全な作業環境を維持できる仕組みをつくる活動でもあるのです。

まとめ 5S活動から現場の安全管理の実態を見よう
5S活動は、整理・整頓・清掃・清潔・躾を基本とする職場改善活動です。
工場の安全パトロールでは、これらの実施状況を確認することが大切です。
しかし、職場がきれいに片付いていることだけで、安全管理が十分とは限りません。
不要なものが危険を生んでいないか
必要な工具や資材を安全に取り扱えるか
清掃を通じて設備の異常を発見できているか
安全な状態が継続して維持されているか
決められたルールが実際の作業で守られているか
そして、5S活動が乱れる原因を確認し、改善につなげられているか
ここまで確認しましょう。
5S活動の安全パトロールは「職場がきれいか」を見るだけでなく、「安全な状態を維持できる仕組みになっているか」を見る活動です。
作業者の意識だけに頼るのではなく、設備、作業方法、保管場所、管理体制を改善する。
また、現場で生まれた良い工夫を評価し、他の職場へ広げる。
その積み重ねが、安全な職場づくりにつながるのではないでしょうか。
安全パトロールは、5S活動を通じて現場の安全を支える仕組みを確認し、改善する機会でもあるのです。

参考文献
1. 中央労働災害防止協会(中災防)
中央労働災害防止協会 公式サイト
5S活動、職場の安全衛生活動、危険予知活動などに関する資料。
2. 厚生労働省「職場のあんぜんサイト」
職場のあんぜんサイト
労働災害事例、ヒヤリ・ハット事例、リスクアセスメント関連資料。転倒、墜落、はさまれ・巻き込まれなどの危険を確認する際に参考になります。
3. 厚生労働省「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」
安全衛生活動を継続的に改善するための管理体制や仕組みを考える際の参考資料。
4. 厚生労働省「労働安全衛生規則」
通路、作業場、機械設備などに関する安全衛生上の規定を確認するための法令。
e-Gov法令検索
※上記は記事内容に関連する参考資料の候補です。実際に参照した資料を文献として掲載してください。
あんぜんくんの一言
「5Sは片付けて終わりじゃないよ!安全な状態を続けられる仕組みが大切なんだ!」


