【重工系労働安全アーカイブ#23】非定常作業と変更管理|いつもの手順が使えないときどうするか

変更管理アイキャッチ Industrial safety

現場では、

「いつもと同じ作業です」

と言われることがあります。

しかし、本当に同じでしょうか。

作業場所が違う

設備が違う

工具が違う

作業者が違う

足場が違う

保護具が違う

周囲で別の作業をしている

設備の停止方法が違う

こうした小さな違いが重なると、

いつもの手順をそのまま使ってよいとは限りません。

非定常作業では特に、

「何をするか」だけでなく、「前回と何が違うか」

を見ることが重要です。

これが、

変更管理

あるいは、

変化点管理

という考え方です。

変更管理とは

変更管理というと、

設備改造や大規模な設計変更

を思い浮かべるかもしれません。

しかし、現場の安全では、

もっと小さな変化も重要です。

たとえば、

いつも使っていた工具が使えない

いつもの作業場所が足場工事で狭くなっている

担当者が変わった

応援者が入った

設備の一部を仮復旧している

安全装置を一時的に解除している

こうした変化でも、

作業条件が変わればリスクも変わります。

つまり変更管理とは、

変わったものを見つけ、その変化によって新しい危険が生まれていないかを確認すること

です。

変更管理

なぜ「いつもの手順」が使えなくなるのか

標準作業手順は、

ある前提条件のもとで作られています。

たとえば、

この設備を使う

この場所で作業する

この工具を使う

この人数で行う

この安全装置が使える

この足場がある

この順序で作業する

ところが非定常作業では、

その前提が崩れることがあります。

設備故障

定期修理

仮設

改造

応急処置

復旧途中

試運転

こうした場面では、

手順書は同じでも、現場条件が違う

ということが起こります。

だから、

「手順書どおりやった」

だけでは十分ではありません。

重要なのは、

その手順書が成立する条件が今もそろっているか

を見ることです。

いつもの手順が使えない

まず「変わったもの」を探す

非定常作業で変更管理を行うときは、

難しく考えすぎなくても構いません。

まず、

前回と違うものは何か

を探します。

たとえば、

  • 作業場所
  • 作業方法
  • 設備
  • 工具・治具
  • 作業者
  • 人数
  • 保護具
  • 材料
  • 作業順序
  • 停止・隔離方法
  • 周辺作業
  • 天候・照明・足場などの環境

です。

この中で一つでも変わっていれば、

リスクアセスメントを見直すきっかけ

になります。

変化点のチェック

作業場所が変わる

同じ作業でも、

場所が変われば危険は変わります。

たとえば、

いつもは床面から点検していた

今回は足場の上から点検する

これだけで、

転落

工具の落下

足場との干渉

避難経路の狭さ

といった新しい危険が生まれます。

あるいは、

通常は広い場所で作業する

今回は設備停止中で仮設配管や資材が置かれている

すると、

つまずき

挟まれ

退避困難

が新たなリスクになります。

場所が違えば、同じ作業でも同じリスクではありません。

作業場所が変わる

作業方法が変わる

「いつもの方法が使えないので、今回はこうしよう」

という場面もあります。

たとえば、

通常は専用工具を使う

しかし工具が入らない

そこで別の工具を使う

通常は設備を完全停止する

しかし今回は部分停止で作業する

通常は分解して取り外す

今回は時間がないので、その場で補修する

こうした、

「今回はこうする」

が出たときこそ、変更管理が必要です。

問題なのは変更そのものではありません。

問題なのは、

変更したのにリスク評価が以前のまま

であることです。

作業方法が変わる

設備が変わる

似たような設備でも、

同じとは限りません。

メーカーが違う

型式が違う

容量が違う

安全装置が違う

バルブ配置が違う

インターロックが違う

古い設備と新しい設備が混在している

それなのに、

「同じポンプだから」

「同じコンベヤだから」

と考えてしまうと、

思い込みにつながります。

非定常作業では、

設備名称ではなく、今作業する設備そのものを見る

ことが大切です。

設備が変わる

工具・治具が変わる

工具の変更も立派な変化点です。

専用工具から汎用工具へ

電動工具から手工具へ

長いレンチから短いレンチへ

クレーンからチェーンブロックへ

治具を別のものへ変更

こうした変更によって、

必要な力

姿勢

手の位置

反力

吊り方

作業時間

が変わります。

結果として、

挟まれ

切創

転倒

重量物落下

腰痛

といったリスクが変化します。

「工具が違うだけ」

で済ませないことが重要です。

工具が変わる

作業者が変わる

人も重要な変化点です。

いつもの担当者ではない

新人が入る

応援者が入る

協力会社が変わる

責任者が交代する

人数が減る

夜勤者が対応する

これだけでも、

設備知識

経験

合図

役割分担

危険感受性

が変わります。

非定常作業では、そもそも経験機会が少ないため、

「誰がやるか」そのものがリスク条件

になります。

作業者が変わる

保護具が変わる

保護具も、

単に「着けているか」だけではありません。

作業内容が変われば、

必要な保護具も変わります。

通常点検ではヘルメットと安全靴だけだった

今回は薬品洗浄がある

今回は高温部を触る

今回は粉じんが発生する

今回は高所作業になる

すると、

保護メガネ

耐薬品手袋

耐熱手袋

防じんマスク

墜落制止用器具

などが必要になるかもしれません。

作業条件が変わったのに、保護具だけ前回と同じ

という状態も危険です。

保護具が変わる

周囲の作業が変わる

自分の作業が同じでも、

周囲が変わることがあります。

近くでクレーン作業をしている

足場を組み替えている

電気班が送電準備をしている

配管班が別系統を開放している

溶接作業をしている

すると、

自分たちの作業環境も変化します。

大規模な非定常作業では、機械、電気、配管、溶接、足場、クレーンなどが同時進行することもあります。

だから、

自分たちが変わっていなくても、周囲が変われば再確認

が必要です。

周囲の作業が変わる

「変化点」を見つけたらどうするか

変化を見つけたら、

そこで終わりではありません。

基本は、

変化点を見つける
↓
その変化で新しい危険が生まれないか考える
↓
必要ならリスク評価を見直す
↓
対策を決める
↓
関係者で共有する

です。

たとえば、

使用工具が変わった

なら、

手を挟む位置は変わらないか

必要な力は増えないか

反力で転倒しないか

周囲に干渉しないか

というように考えます。

変更管理とは、

書類を増やすことではありません。

「変わったから、もう一度考える」

ための仕組みです。

変化点をみつけたらどうする

小さな変化ほど見逃されやすい

設備を大改造した。

工程を全面変更した。

となれば、

誰でも変更管理が必要だと思います。

難しいのは、

小さな変更

です。

工具だけ変えた

担当者だけ変わった

仮設足場を少し動かした

一つのバルブだけ別系統にした

今日は二人ではなく一人

こうした変更は、

「この程度なら大丈夫」

と思われやすくなります。

しかし災害は、

大きな変更だけで起きるわけではありません。

むしろ、

小さな変更が複数重なったとき

に危険になります。

たとえば、

担当者が違う
↓
工具も違う
↓
作業場所も狭い
↓
時間もない
↓
通常手順どおりにできない

という状況です。

一つひとつは小さくても、

重なるとリスクは大きく変わります。

小さな変更が招くリスク

変化点気付きカードという考え方

ここで有効なのが、

変化点気付きカード

のような仕組みです。

考え方はシンプルです。

作業前に、

「前回と何が違う?」

「いつもと違うものはある?」

を作業者自身が確認します。

たとえばカードに、

作業場所は同じか

方法は同じか

設備は同じか

工具は同じか

作業者は同じか

保護具は同じか

周囲の作業は同じか

といった項目を並べます。

一つでも、

「違う」

があれば、

そこを確認してから作業する。

この仕組みのよいところは、

最初から全部の危険を思い出そうとするのではなく、

「いつもとの違い」を入口に危険へ気づく

ことです。

変化点気づきカード

変更があったら「立ち止まる」ルールを作る

変更管理で大切なのは、

変化に気づくことだけではありません。

気づいたあとに、

そのまま進まない

ことです。

たとえば、

「前回と違う点があれば作業開始前に責任者へ確認する」

「手順変更が必要なら一旦作業を止める」

「設備条件が変わったらRAを見直す」

と決めておきます。

つまり、

変化点=再確認の合図

にします。

これなら、

作業者個人の判断だけに任せず、

組織として変更を管理できます。

変更があったら立ち止まる

「変更した人」と「作業する人」が違う場合がある

これも現場では重要です。

設備担当者が設定を変えた

電気担当者が配線を変更した

別班が足場を移動した

運転員がバルブ状態を変えた

しかし、

実際に作業する人が、

その変更を知らない

これでは危険です。

だから変更管理では、

何を変えたか

だけでなく、

誰に伝えるか

まで含めて考える必要があります。

変更は、

伝わって初めて管理された

と考えた方がよいでしょう。

変更は伝わって管理される

変更したあとに元へ戻すことも管理する

非定常作業では、

一時的な変更

も多くあります。

インターロックを解除した

仮設電源を使った

バイパス配管を使った

ガードを外した

安全装置を無効にした

仮設足場を作った

こうしたものは、

作業終了後に元へ戻す必要があります。

つまり変更管理には、

変更する管理

だけでなく、

復旧する管理

も含まれます。

復旧漏れがあれば、

次の運転時に危険になります。

復旧管理

変更管理とリスクアセスメントはセット

変更管理とリスクアセスメントは、

別々のものではありません。

変更管理で、

「何が変わったか」

を見つける。

リスクアセスメントで、

「その変化によって何が危険になったか」

を考える。

という関係です。

だから、

変更あり
↓
危険源を再確認
↓
リスクを再評価
↓
対策を変更
↓
関係者へ共有

という流れにすると分かりやすくなります。

変更管理とリスクアセスメントはセット

非定常作業と変更管理 まとめ

非定常作業では、

いつもの手順が、そのまま使えるとは限りません。

作業場所

作業方法

設備

工具

作業者

保護具

周辺作業

停止・隔離方法

こうした条件は、

その都度変わる可能性があります。

だからこそ、

「いつもと同じか」ではなく、「前回と何が違うか」

を見ることが重要です。

そして、

変化点を見つける
↓
新しい危険がないか確認する
↓
必要ならリスクアセスメントを見直す
↓
対策を決める
↓
関係者へ共有する
↓
作業後に復旧を確認する

という流れで管理します。

非定常作業の変更管理とは、

変化そのものを禁止することではありません。

現場では、

変更が必要になることもあります。

重要なのは、

変わったのに、昨日と同じつもりで作業しないこと

です。

いつもと違う。

だから、もう一度見る。

もう一度考える。

もう一度共有する。

これが、

非定常作業における変更管理の基本

なのです。

変更管理まとめ

安全くんの一言

「いつもと違う」があったら、そのまま進まず、もう一度リスクを見直そう!

安全くん

<執筆者情報>
難波一夫
IHI/石川島播磨重工業出身の重工系技術士(金属部門)
中小企業診断士・労働安全コンサルタント・エネルギー管理士資格を保有
材料から設備を診る! 技術経営コンサルタント

やくも技術士事務所|重工系技術士(金属部門)・労働安全コンサルタント・中小企業診断士 難波 一夫|材料から設備を診る 損傷解析から設備マネジメント・労働安全・経営まで総合支援
中小企業診断士・労働安全コンサルタントの資格を持つ重工系技術士(金属部門)が、発電設備の損傷解析、材料劣化評価、保全最適化、安全対策を総合的に支援。実務経験に基づく技術コンサルティングを提供します。
重工系技術士|材料・設備・安全・経営をつなぐ技術コンサルティング|やくも技術士事務所
中小企業診断士・労働安全コンサルタントの資格を持つ重工系技術士(金属部門)が、発電設備の損傷解析、材料劣化評価、保全最適化、安全対策を総合的に支援。実務経験に基づく技術コンサルティングを提供します。